子ども自己肯定感の形成はどのように行われるのか?
本日は、自己肯定感の形成に必要になる「他者理解」を学びます。
これが理解できれば、我が子の他者理解を深めるヒントになります。
ここでは幼児での話が主となります。それでは共に学んでいきましょう!
おはようございます、ティラノ博士!
Good morning こぶおくん。
今日も朝から何をしているのん?
前回、自己受容を教えてもらったと思うのですが、続きを教えてください!
確か、他者理解だったと思います。
勉強熱心だのん。
他者理解は自己肯定感形成のために必要な要素だのん。
それでは早速初めていくのん!
目次
他者理解とは?
他者理解とは、他者の行動や性格、特徴などを理解することです。
相手の立場に立って物事を想像し、相手を理解しようとする姿勢になります。
自己肯定感を形成するためには、この「他者理解」は自己理解・自己受容と同じように必要不可欠な存在だからです。
というのも、他者理解は自己理解と相互に関わりながら深まるからです。
引用:福島教育センター
自己理解が先行する場合、他者からの肯定的なフィードバックにより自己肯定感は形成されます。
また他者理解が先行する場合、他者と自分を比較しつつ、自己理解を深めることできるのです。
このように自己理解と他者理解は相互に関わることが、自己肯定感形成につながるのです。
他者理解のメリット
他者理解を深めるメリットは、「より多くの人達と、関係を構築しやすいこと」です。
「自分の考えが全て」ではなく、「多種多様な考え方や価値観があることを理解できること」になります。
だからこそより多くの人達と、関係を構築できるのです。
誰しもこの世で一人で生きていくことはできません。
だからこそ、他者理解を深めることの重要性が理解できるはずです。
他者理解は、相手を理解することなんですね。
その名の通りだのん。
自己理解と相互に関係し合っている大事なスキルだのん。
他者理解はいつ頃から、どのように深まっていくのでしょうか?
良いポイントだのん。
幼児の頃から始まると言われているが、明確なものはないのん。
実際に幼児を対象にした研究があるので紹介するのん。
幼児の他者理解はどのように深まるのか?
それではどのように他者理解は深まるのでしょうか。
前述したように、他者理解は自己理解と相互に関わりながら深まっていきます。
ただどちらが先に始まるのか?に関しては、自己理解から始まるとされています。
なぜかというと、自分の内面的なものは理解できるが、相手の内面を推測するのは難しいことであるからです。
これは幼児となれば、尚更でしょう。
幼児を対象とした研究
ここで幼児を対象とした1つの研究を紹介します。
この研究では、年長の男児12名/女児12名および年中組の男児14名/女児18名の合計56名を対象として、行動や人格の特徴などの項目をスコア化し、他者理解と自己理解の発達傾向を観察しています。
結果をまず紹介します。
自己理解/他者理解、それぞれが先行する事柄があり、さらには年齢と共にそれらが相互に影響し合い、深まることが分かりました。
例えば、年中では人格特性の項目で、自己理解と他者理解に相関がなかったが、年長では正の相関関係が生まれていたのです。
他者理解の初期段階
では、年中児童において、他者理解が先行していた事柄はなんだったのでしょうか?
「身体的・外的の特徴」になります。
身体的・外的の特徴とは、例えば「かっこいい」「かわいい」などの外見の特徴です。
年中児童において、この項目は自己理解よりも他者理解の得点が高かったのです。
研究者の考察としては、自分を見つめるよりも、他の子の外見の特徴は把握することが容易であるからです。
例えば、「⚫︎⚫︎くんのお洋服がポケモンでかっこよかったんだ。」「⚫︎⚫︎ちゃんのハンカチがプリキュアでかわいかったの。」というやりとりは、子どもがいる家庭で聞くのではないでしょうか。
この時点で既に他者理解が始まっています。
また、他の子の外見を「評価する」という行動は、自分を見つめて「評価する」という自己理解につながることになります。
「僕は⚫︎⚫︎を着ている。」「私は⚫︎⚫︎が欲しい。」など、主語が自分であれば自己理解に影響を及ぼしている可能性があります。
これは他者理解が先行して起こり、自己理解を深めるきっかけになっていることが分かります。
話は戻りますが、他者理解の初期段階は「他人の外見的特徴」の可能性が高いと思われます。
ただ年齢が上がるにつれ、他人の外見的特徴のスコアは下がります。
では、幼児たちの中で、何が起こっているのでしょうか。
他者理解の次の段階
年長のスコアを見ると、他者理解において「外見的特徴」のスコアよりも高いスコアがありました。
それは「行動」「人格特徴」です。
順序は、「行動→人格特徴」になります。
ちなみにですが、「外見的特徴」のスコアは、年中から年長にかけて減少していたのです。
上記から考えると、他者への理解が見た目の「外見」だけでなく、他者の「行動」や「人格」など多面的に広がっていることが分かります。
「行動」の他者理解
年長児の他者理解の順序として、「行動」が先に拡大します。
それはなぜかというと、人の「行動」は目につきやすく、理解も、比較もしやすいからです。
前述した「外見的特徴」は見た瞬間にわかる事柄が多い一方で、「行動」はじっと見るような観察する行為が必要となります。
ここで注意したいのは、全ての「行動」を理解するということではなく、「行動」の中でも他者を理解をしやすい特徴があった(自己理解に比べて)、という認識の方が良いと思います。
年長児に対して過度な期待をしてしまう可能性もありますので。
では、行動の中でもどんな「行動」を、年長児は理解しやすかったのか?
「一緒に遊ぶ」「仲良し」「いじめる」などの協調的な行動が、他者理解の方が先行していました。
例えば、「⚫︎⚫︎くんと一緒に遊んだよ。」、「⚫︎⚫︎くんが、⚫︎⚫︎ちゃんのこと叩いていたよ。」などです。
このような友達の話が子どもとの会話に出てきたら、行動面の他者理解自己理解が深まっている傾向があります。
ちなみにですが、「行動」の項目の「協調的な行動」での他の項目は、下記の行動です。
活動・・・遊ぶ、サッカーをする、鉄棒をする、絵を描くなど、自己理解と同様のスコアだった。
勤勉な行動・・・片付けをする、勉強するなど、自己理解が先行していた。
能力評価を含む行動・・・足がは速い、鉄棒が上手い、歌が上手など、自己理解が先行していた。
「人格特性」の他者理解
他者を理解する「行動」の次の段階は、「人格特性」です。
人格特性とは、その人の特徴を表すような内容になります。
例えば、面白い、良い子、悪い子、笑う、怒るなどがその人の特性になります。
ここでも注意したいのは、全ての「人格特性」を理解するということではなく、「人格特性」の中でも他者を理解をしやすい特徴があった(自己理解に比べて)、という認識の方が良いと思います。
では、人格特性の中でもどんな「人格特性」を、年長児は理解しやすかったのか?
「やさしい」などの協調性、「笑う」「泣く」「おこりんぼ」などの感情特性という「人格特性」が、他者理解で先行していました。
例えば「⚫︎⚫︎ちゃんは、やさしいんだよ。」「⚫︎⚫︎くんは、おこりんぼだからすぐ叩くんだ。」などです。
このような内容が会話に出てきたら、「人格特性」の他者理解自己理解が深まっている傾向があります。
他者理解の深まり方
幼児における他者理解の深まり方を国内の研究結果を踏まえ、紹介しました。
目に見える友達の「外見」や「行動」から、友達の内面的な部分である「性格」や「特徴」など、目に見えない部分に、理解が深まっていくと考えられます。
その過程で自分を見つめることができ、「自己理解も深まる」という流れができます。
他者理解は「比較」を生み、自己理解を深めるのです。
ただ全てが他者理解が先行するわけではありません。
例えば、「片付ける」「兄弟の面倒を見る」などの勤勉的な行動、「足が速い」「鉄棒ができる」などの能力評価の行動は自己理解の方が早いです。
また人格特性に関しても、「楽しい」「元気」などの外向性、「強い」「いい子」「悪い子」などの評価は、自己理解の方が早かったと研究結果として挙げられていました。
またここでの注意点として、この研究ではサンプル数が少なかったとの記載はありました。
あくまで幼児の他者理解と自己理解はこのような傾向で進むんだな、全ての子どもたちには当てはまらない可能性もある、と解釈した方が良いかもしれません。
(長かった。。。)
目に見えることの理解から始まり、目に見えない内面への理解につながっていくんですね。
そう言うことになるのん。
実は、他者との関係性において、他者理解だけでは不十分だということがわかっているんだ。
え?そうなんですか!?
早速教えてください!
他者理解と「共感性」の関わり
他者理解を深める際、「共感性」を一緒に深めた方がいい、という研究があります。
この研究での「共感性」の定義は下記の2点です。
- 同情や思いやりなど他者への援助行動
- 援助の回避行動(援助をしない行動)
例えば、近くにいる赤ちゃんが泣くと、自分(赤ちゃん)も泣くというのも「共感性」になります。
3歳頃保育園で、泣いている友達に声をかけたり、先生を呼んできたりするのも「共感性」になります。
一方、共感性が欠如するとどうなるか?
実は、他者への攻撃行動やいじめにつながる危険性があります。
これは相手の行動や人格特徴などを理解する他者理解だけ深めて、相手に寄り添うような「共感性」が浅いという状態になります。
この場合、他者理解が深いことで「相手が嫌なこと」「相手が困りそうなこと」も理解していることにもなります。
実際にそのような研究結果が出ています。
15 歳〜69 歳 の 300 名 (男女均等) を対象に、共感性と他者理解の関係を検討した研究である。
他者理解と共感性をスコア化し、2つの項目のスコアに応じて4グループに分けました。
その後その4グループに対して、他者への行動がどのようなものか?を検討しています。
結果、他者理解のスコアが高く共感性が低いと、他者への介入が低いこと分かりました。
例えば、嫌いな先輩がクレジットカードを目の前で落としても、「先輩が困ることは理解できるが、教えてあげない。」という傾向があったのです。
これが「いじめや犯罪につながることが懸念される。」と論文には記載がありました。
他者理解は相手の行動や性格などを理解するスキルになります。
ただ他者を理解するだけで、「本人がどう行動するか?」は本人次第ということになります。
もし敵対するような相手を理解をした場合、攻撃的な行動に移ってしまう可能性もあります。
一方で、味方の場合には相手の性格や特徴に合わせて、援助をするという行動になります。
共感性を高める
共感性を高めるには「相手の話を聞く」に尽きます。
相手の話を傾聴し、相手を理解することが共感性を高めることにつながります。
その中でも注意すべき点が下記になります。
- 最後まで相手の話を聞く
- 異なる意見でも話を聞く
- 相手の立場に立って聞く
要は、相手の立場を理解することになります。
そして相手はなぜその立場にいるのか?が理解できることができれば共感性が高められると報告があります。
他者理解に似た部分がありますが、ここでいう共感性は相手の立場を理解し、行動することになります。
他者理解の少し怖い部分が見えましたね。
相手を理解するだけでなく、思いやることが大事なんだのん。
そのためにも場数も必要だし、ママパパの介入も大事なんだのん。
他者理解を深める
我が子の他者理解をどう深めるか。
他者とのコミュニケーションが重要と考えられます。
特にママパパとのやりとりがその補助にもなりえます。
コミニティへの参加
これは他者がいる場所に子どもに参加してもらい、コミュニケーションの回数を上げることにつながります。
ここでのポイントは、1回の集いではなく、複数回にわたって集まるコミニティに参加することです。
例えば、幼稚園、習い事です。
1回のコミニティへの参加では、相手のことを十分に知らず終わってしまう可能性があるからです。
特に子どもであれば尚更です。
そのため、定期的に特定の相手とコミュニケーションが取れるコミニティに参加することで、相手の外見→行動→内面の特徴や性格を理解することが、結果的に他者理解を深めることになります。
ママパパとのやりとり
毎度お馴染になってきましたが、ここでもママパパの役割が重要になります。
ママパパは子どもの他者理解を深める指針になり得るからです。
子どもがママパパに今日の出来事を伝えるやりとりはよくあると思います。
これが他者理解を深める機会になります。
友達や先生が必ず出てくると思いますが、その時に「なんで⚫︎⚫︎くんはそんな行動をしたんだろう?」や「⚫︎⚫︎ちゃんはどんな思いだったのかな?」など、他者の行動や内面を理解することを促すことが大切なやりとりになります。
我が家でもよく兄弟喧嘩の時にそのような会話になります。
私「なんで兄くんは、嫌だったの?」
兄「弟くんがおもちゃを独り占めしたから。」
私「なんで弟くんはそんなことをしたんだろうね?」
兄「わからない。」
私「弟くん、なんでおもちゃを独り占めしたの?」
弟「やってみたかったから。」
私「なんで?」
弟「お兄ちゃんみたいやりたかったから。」
私「お兄ちゃんみたく、かっこよくやりたかったかな?」
弟「うん。」
私「お兄ちゃん、なんでもできてかっこいいもんね〜」
兄くんはここで「おもちゃで遊びたいから、おもちゃを独り占めしたをした弟くん」から、
「自分に憧れて、真似をしようとした弟くん」へ、他者理解の変化が起こります。
この後、お兄ちゃんは嬉しかったようで、弟くんにやり方を教えてあげながら、遊んでいました。
いつも喧嘩をしおり、全てうまくわけではありませんが(汗
大切なのは「なぜ?」と、見えない部分を掘り下げる導く意識とママパパの考えをなるべく出さないことです。
またここで忘れてはならないのは、「子ども本人がどう感じたか?」という自己理解を深めることです。
目的は自己肯定感を深めることです。
自己肯定感の形成には、自己理解と他者理解の両方が影響し合うことで形成されます(自己受容、他者受容もですが)。
そのことからママパパのやりとりにおいても、他者理解と自己理解の部分を子供から引き出し、意識しておく必要があります。
ママパパが介入することで他者理解に加えて、共感性や自己理解も深められると言うことですね。
そうなんだのん。
これが子どもとママパパの信頼関係を深める行為にもつながるんのん。
確かにですね。
でも結構いろんな親子がこのような会話をしていそうだよね。
いつも言っているけども、知らないでやるよりも、理解して意識してやる方が行動も継続しやすいのん!
(あ、怒った、まずい)
そうですよね。その方が絶対いい気がします。
では、自己肯定感形成の最後の「他者受容」ってなんですか?
(もう朝から疲れたのん。。。)
この後、お客さんと会う予定だから、また今度にしよう。
さようなら〜
あ〜また強引に逃げられてしまった。
今日はありがと〜、またね〜
まとめ
- 他者理解は、他の人の行動や性格などを理解すること
- 他者理解は、自己理解と共に深めることができること
- ママパパと子どものやりとりが他者理解を深めること
いかがでしたでしょうか?
今回は他者理解とは一体何か?他者理解にどんなメリットがあり、どう深めるのか?を学びました。
他者理解は、「他者の行動や性格、特徴などを理解すること」です。
他者理解が深い程、多くの考えを受け入れ、より多くの人達と関係を築くことができるようになります。
これが自己理解と相互に影響し合うことで自己肯定感の形成にもつながります。
ぜひ、深めてほしいスキルの1つですね。
次回は、他者受容に関して学んでいき、自己肯定感の形成を一通り終えたいと思います。
ティラノ博士が言うように、「知らないでやるよりも、理解して意識してやる」では、だいぶ行動も継続力も変わるのではないでしょうか?
この記事によって少しでも読者の方々の意識と行動に変化があれば幸いです。
未来ある子供たちのためにも、共に学んでいきましょう!
それじゃ、Have a nice day!
【引用】
柴田利男 「幼児における自己と他者の理解」
溝川藍・子安増生 「他者理解と共感性の発達」