空間認知能力とは、飛んでくるボールを取ったり、地図を見て移動する能力のことです。皆、自然と身についている能力ですが、より伸ばすことでクリエイティブな発想やスポーツが得意になる可能性が高いです。まずは空間認知能力とは、一体どういう能力なのか。その点を今日は深掘りします。これが理解できれば、ママパパは赤ちゃんとのやりとりが増えるのではないかと思います。それでは共に学んでいきましょう!
こんにちは、ティラノ博士!
この前は赤ちゃんの数の能力について教えてくれてありがとう!
こんにちは、こぶおくん。
あのくらいなら容易いことだのん。
でも妹と積み木で遊んでいるんだけど、積み木を掴んで舐めたり、別のところを見てたりして、
数の遊びが全然できないんだ。
ん〜それは空間認知能力が発達してきているかもしれないね。
今日はその空間認知能力について紹介するのん。
目次
空間認知能力
空間認知能力は「空間にある物の位置や大きさ、形、速さ、向きなどを理解する能力」のことで、非認知能力の1つになります。
具体的には、「地図を見て目的地に行ける」「展開図を見て出来上がりを理解できる」などの力です。
空間認識能力は、スポーツ、科学、テクノロジー、エンジニアリング、クリエーター、建築、数学の分野で必要と言われています。
例えば、体操の選手は自身が空中で回転をしている時に、自分の位置や方向を瞬時に把握できる、ピッチャーは打たれたボールがどこに飛んでくるかを瞬時に把握する、などです。
またゲームクリエーターは、モンスターがどのように襲ってくるか、主人公がどう戦うか、背景をどうデザインするか、など3次元で考え、ゲームを創るので、その際に空間認知能力が発揮されます。
この能力は、日本の保育所保育指針と幼稚園教育要領の「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」の1つ「量・図形、文字等への関心・感覚」に関わる能力です。
実はこの能力も、ママパパの言葉が影響をしています。
ママパパの言葉と空間認知能力の関係
数の観察研究に続けて、Susan C. Levine教授(Chicago大学)の研究を紹介します。
今回の研究では、保護者が話す物の大きさや形を表す言葉が赤ちゃんの空間認知能力にどう影響を及ぼすかを観察した研究になります。
例えば、丸、四角、三角、大きい、丸い鋭い、高い、短いなどの言葉がどのくらいママパパから発せられているか?その赤ちゃんが成長した時にどのくらいの空間認知能力があったのか?を調べています。
結果は予想通りです。
空間に関する言葉をより多く聞き、空間認識能力のテストをすると高得点だったのです。
この研究は、生後14ヶ月から2年半の期間でママパパの空間に関する言葉の量を観察しました。
家庭によりその言葉の量は大きく違う結果が出たのです。
例えば、13.5時間の間に、空間認識に関わる大きさや形に案する言葉を5個しか聞かなかった子供もいれば、525個以上聞いた赤ちゃんもいたのです。
また空間認知に関する言葉をよりたくさん聞いた子供は自分でも言葉を話す傾向が見られました。
物の大きさや形を表す言葉を子供が使った数は最小4個、一方で最大は200個でありました。
また2年後、子供たちが4歳半になった際に、空間認知能力を調べるテストをしました。
テストの中身は、頭の中で物体を回転させる、ブロックの絵を写し書きする、空間上の関係が見ているかどうかを判断する、のような空間認知能力を調べるテストです。
空間に関する言葉をより多く聞き、自分でも使っていた子供はテストで高得点だったのです。
この結果を示しているのは、空間に関する言葉を聞く経験が空間認知能力にプラスの影響していることです。
言葉が空間認知能力まで伸ばすとは、驚きですね。
妹に、大きさや形の言葉をたくさん使ってみますね!
ちょっと、ストップだのん。
覚えておきたいのは、「空間認知に関する言葉を赤ちゃんが使った」というポイントだのん。
ママパパの言葉量だけではダメということだのん。
「言葉を多く聞き、実際に使う」このサイクルが空間認知能力を育てるのん。
なるほど、そこの視点は抜けていました。
でも、自分で使う、なんてどうすれば良いんですか?
言葉を使う物事に、興味を持ってもらうことだのん。
その点紹介するのん。
空間認知能力の発達はいつから?
リーチングが赤ちゃんの空間認知の合図
私が調べた限りでは、赤ちゃんの空間認知は生後約4ヶ月から始まります。
これは赤ちゃん以外の観察者が見て、「空間認知が始まっているな」と科学的にわかった時点です。
実は体が動かないだけで、赤ちゃんの視点では見えてるのかもしれません。
では、観察者はどのようにして、赤ちゃんの空間認知が始まったかを把握したのかというと、赤ちゃんのリーチングという動行動を確認したからです。
リーチングとは、「視覚的に捉えたある物に向かって手を伸ばし、それを掴むまでの一連の行動」と定義されています。
これは、赤ちゃんがモノを掴むために、モノの位置や大きさ、形といった情報を目で確認し、手を伸ばして取るという行動です。
先程紹介したように、この行動には空間認知能力が必要になります。
生後4ヶ月で空間認知の発達が始まる
次にこのような赤ちゃんの「モノを掴む」が、どのように発達していくかを見た研究を紹介します。
3人の赤ちゃんを生後10週から24週まで、毎週1回各家庭を訪問して、実験を行いました。
実験は、ママの膝の上に赤ちゃんをのせて、目の前の机におもちゃ(ガラガラ、積み木、ミニカー)を1つ置いて、赤ちゃんがどう反応するかを観察しました。
赤ちゃんの肩から中指までを伸ばした際に届く位置に、おもちゃを1つ置いて、反応をみました。
この実験ではリーチングの前の、プレリーチングというものを見ており、「赤ちゃんがおもちゃをじっと見て、おもちゃに向かって手を近づける」と定義していました。
結果
赤ちゃんは、17〜18週ごろに空間認知能力が発達してきていることが分かりました。
・17〜18週頃赤ちゃんは、遠くにあるおもちゃよりも、手が届く範囲のおもちゃをじっと見るようになりました。
・17〜18週頃赤ちゃんは、プレリーチングを始め、遠くのおもちゃよりも、手の届く範囲にあるおもちゃをプレリーチングする回数が増えました。
この結果から考えると、17〜18週ごろから赤ちゃんは、3次元的に奥行きを把握することができ、その情報からプレリーチングを行っています。
この時点で、空間認知能力の発達が始まっていると考えられます。
またこの状況になるまでに3人の赤ちゃんに共通点がありました。
16〜17週で「定頸」という、赤ちゃんが自力で、頭を垂直に固定ができるようになることでした。
「定頸」が起こると、赤ちゃんは奥行きを把握し、手の届く範囲にある興味ある対象物に触ることにつながるのです。
この「定頸」を経て、赤ちゃんは空間認知能力が発達する可能性があります。
プレリーチングと
この研究で、もう一点気になる報告があります。
赤ちゃんの発声です。
赤ちゃんはプレリーチングをする時に、発声を多く伴っていたのです。
ただ、おもちゃを見ていない時は、発声を伴うことは少なかったとの報告でした。
研究者はこのように報告しています。
刺激への注意が筋緊張の高まりを生じさせることで身体運動が活発となり、さらにそれが発声器官の活動を促進する役割を果たすとされる。
明和 政子「生後半年未満の乳児における空間認知」
刺激というのは、おもちゃのことになります。
成長するにつれ、プレリーチング(身体運動)が活発化することは、発声を促すということになります。
この研究では、「17〜18週のプレリーチングが増加し始めたころから、発声の量も急激に増えた」との報告がありました。
では、なぜ赤ちゃんは発声をするのでしょうか?
過去の研究報告で、1歳の赤ちゃんは大人とのやり取りの中で、大人に向かって発声し、大人は赤ちゃんの発声に合わせて応答する、という研究報告があります。
例えば、赤ちゃんが「あう〜あぅ〜あ〜」とママやパパに向かって発声したら、ママパパは「あう〜あぅ〜あ〜」と同じように赤ちゃんに向かって発声する、という感じです。
この研究では、赤ちゃんはママの膝に座るので、赤ちゃんはママを見るには後ろを振り向かなければなりません。
しかし、赤ちゃんがおもちゃを取ろうとしている時や取った時に発声した際に何が起きたと思いますでしょうか?
ママが、あかちゃんの発声に対して応答したり、赤ちゃんの行動をのぞき込む行動をしていたのです。
また実験が終わった後には、ママは「がんばったね!」「おもちゃが取りたかったのね!」と赤ちゃんとやり取りをしていたそうです。
このころの赤ちゃんは遠くのものは自力で取ることはできないと思いますので、赤ちゃんの興味のあるものを持ってくるのはママやパパだと思います。
その興味のあるものに対してリーチングや発声を行うことは、ママやパパの視線を集め、赤ちゃんの行動を理解させる効果があります。
それにより、ママパパと赤ちゃんのやり取りは増えていきます。
このやり取りが繰り返されることで、赤ちゃんの空間認知能力や運動機能、発声、コミュニケーション(オキシトシン分泌等)を更に発達させる可能性があるのです。
今回は空間認知能力の話でしたが、最終的にはやはりママパパの言葉の重要性が理解できました。
赤ちゃん空間認知能力を上げるのは、ママパパとのやりとりだったんだね。
でも、この研究はたった3人の赤ちゃんの結果だよね?。
確かにそうだのん。
ただこの筆者は同じような研究を55人の赤ちゃんで行っているのん。
結果は同じで、視覚で距離感を把握し、その情報からリーチングを行い、それに伴い発声が増加したのん。
なるほど、大人数でも結果が同じということは信頼性があるね。
じゃあ結局、ママパパのやりとりとは一体何をすればいいの?
空間認知能力を育てる
興味あるモノ・興味あるコト
生後4ヶ月ごろから空間認知能力を育てるには、先ほどの実験で出ていた「リーチング&発声」の繰り返しになります。
- 赤ちゃんの「興味があるおもちゃ」を用意する。
- そのおもちゃを赤ちゃんの「手の届く範囲」に置く。
- パパママは赤ちゃんに「言葉のやりとり」を行う。
この繰り返しで、徐々に赤ちゃんの空間認知能力は育っていきます。
「興味があるモノ」で「興味があるコト」をすることがポイントです。
赤ちゃんの興味があるおもちゃは、何かわかりません。
そのため、いろんなおもちゃを手の届く範囲に置き、赤ちゃんが興味を示したモノでリーチング遊びを繰り返すと良いでしょう。
「興味があるコト」というのは、リーチングのことです。
「赤ちゃんにとって興味があるおもちゃを触ること」「大好きなママパパに褒めてもらえること」
この2つのことが、赤ちゃんがリーチングという単なる動作を「興味があるコト」に変化させることになります。
我が家の場合
3人目の長女の場合、3ヶ月過ぎに「定頸」ができるようになり、物を掴ませてあげると口に運ぶ動作が増えてきました。
寝返りはまだできない状態です。
ただ、一気に発声が増えました。
ママや私と目が合うと、笑顔の多い子ではあったのですが、以前までは発声はありませんでした。
「定頸」ができてから、笑顔を見せると決まって発声があります。
そして泣き声も大きくなりました。
おもちゃを掴ませてあげると、口に持っていき、発声をします。
我が家では、なるべく発声をしたら、同じように繰り返し、ほめる言葉を伝え、抱きしめてあげています。
恐らく寝返りができたら、リーチングがすぐできるようになるのではと思っています。
ママパパの役割は、「赤ちゃんの興味があるモノで一緒に遊ぶ」というコトだね。
そういうことになるのん。
やはり赤ちゃんと接する機会が大事のん。
でも、うちのママとパパは共働きだし、家にいてもご飯や掃除などあまり時間がなさそうだよ。
確かにそうだのん。
ただ空間認識能力を伸ばすための、ママパパの効果的なやりとりというのは、正直わかっていないのん。
わかる限りのことを次回までに調べておくのん。じゃ。
(あ、いつも通り強引な別れ。)
また次回教えてね〜、今日もありがとうございました!
まとめ
- 空間認知能力は、クリエイティブな職業に活かせれること
- 空間認知能力は、生後4ヶ月ごろから始まり、発達すること
- 空間認知能力は、ママパパの言葉ややりとりで伸ばせること
いかがでしたでしょうか?
今回は空間認知能力に関して、ママパパの言葉環境が影響していることを学びました。
赤ちゃんが、視覚で「興味あるモノ」を捉えて、「触りたい」という行動が、運動機能の発達や脳神経細胞のシナプスの発達に繋がります。
そのことからも、空間認知能力は赤ちゃんの成長には大切な要素とも言えます。
次回は、この空間認知能力をどのように伸ばすのがいいのか?考えていきましょう!
ティラノ博士が言うように、「知らないでやるよりも、知っていて意識してやる」では、だいぶ行動も変わるのではないでしょうか?
この記事によって少しでも読者の方々の意識と行動に変化があれば幸いです。
未来ある子供たちのためにも、共に学んでいきましょう!
それじゃ、Have a nice day!
【参考資料】
明和 政子「生後半年未満の乳児における空間認知」
コエテコ「空間認知能力とは?能力の育て方と生かせる仕事まとめ」
チャイルドアカデミー「発達を促すリーチング遊び 3つのコツ」