赤ちゃんとママパパがやりとりをする時、しっかり目を見ていますでしょうか?笑顔で愛情を持って接していますでしょうか?今回は赤ちゃんとやりとりをする際の前提の部分を紹介します。それでは、共に学んでいきましょう!
こんにちわ、博士!
おお、こんにちわ、こぶおくん。
この前、赤ちゃんの脳の発達の仕組みを教えてくれたけど、何か気を付け所はあるの?
早速、妹と遊んだりしてみたけど、いいのか悪いのかわからなくて。
おお、早速実践とはえらいのん。
そして、行動を振り返って、疑問が出るのはすごいのん。クリティカルシンキングというやつだのん。
では、今日は赤ちゃんとやりとりをする前提の部分を紹介するのん。
目次
「安心感」は、脳を発達させる大前提
赤ちゃんの急成長中の脳は、外から入ってくるすべての刺激(学習)に対して、非常に過敏な状態です。
これが、愛情たっぷりの刺激であれば良いのですが、強いストレスを感じる場合、どうなるでしょうか?
赤ちゃんがある物事を学習をしている最中に強いストレスの影響を受けると、まず学習への集中が途切れ、ストレスの方に注目してしまいます。これが「学習ができない」という阻害要因になります。我々も好きなテレビを見ている時に邪魔をされるとどうでしょうか。「大事な場面を見れなかった。」となることも多々ありますね。同じようなことです。
そして、急成長中の赤ちゃんの脳はストレスに影響を受けます。強いストレス環境下で生活することで、脳は構造的に変化し、幼稚園や小学校で問題行動を引き起こすようになったり、健康上の問題を抱えてしまったりする傾向があります。
そのため、強いストレスを与えないためにも「安心感」のある環境下で育てることが、我が子の脳をより学習の機会を増やし、可能性を開花させることにつながるのです。
話はかわりますが、赤ちゃんの脳に影響を与える代表的なホルモンをご存知でしょうか?
オキシトシン、コルチゾールです。
他にもありますが、ここではこの2つを紹介します。
オキシトシンは、幸せホルモンと言われ、親子の絆を高めたり、心が安定したり、ストレスに強くするという働きがあります。
一方、コルチゾールはストレスホルモンと言われ、過剰に発生すると、脳の発達に悪影響を及ぼします。
この2つの物質を用いて、赤ちゃんの脳の発達について紹介をします。
愛情ホルモン オキシトシン
オキシトシンは、脳の視床下部でつくられ、体内を巡って標的器官に届けられています。体もそうですが、心にもプラスの影響を与えるホルモンです。例えば、母と子の愛情や学校や会社での人間関係構築に関与していたり、ストレス耐性を高めたりという作用がわかっています。
ママと赤ちゃんの愛情
実はママと赤ちゃんは、妊娠時にオキシトシンの影響を受けています。妊娠39週ごろオキシトシンが子宮に届けられ、子宮が収縮し、分娩に至るのです。そのような作用から陣痛促進薬として使われています。産後もオキシトシンは、乳汁射出の引き金になっている。赤ちゃんがママの乳首を吸うことでオキシトシンが作られ、これにより母乳が出てくるのです。またその授乳の行為がオキシトシンを増加させ、ママのストレス軽減にも働いています。お互いに非常に良い関係なのです。
他にもオキシトシンが「母性行動」を促しているという実験の報告があります。
オキシトシンを作られないマウスは、オキシトシンを作れるマウスに比べて、母性行動が少なくなったり、母乳が出なくなったという報告があります。また、子供にもオキシトシンが関わります。子どものマウスは超音波を使って母親を呼び出しますが、オキシトシンが作られなくなった子供のマウスは超音波を使う回数が少ないという報告があります。
オキシトシンは人間同士のスキンシップで主に作られますが、ママと赤ちゃんのやりとりにより、両者にオキシトシンが増加し、心に安心感を与えることになります。
信頼関係
そしてこのオキシトシンは、我が子が成長して、幼稚園や学校に通うようになってからも影響があります。
それが集団行動での信頼関係です。
オキシトシンはストレス耐性を高める働きがあり、集団行動への不安を減少させたり、他人に対する信頼感を増加させる働きをします。
例えば、オキシトシンを投与すると他人を信頼するという報告があります。
オキシトシンを鼻腔スプレーをしたグループと、何も投与しないグループに分けて、投資ゲームを行う実験をしました。すると、オキシトシン投与群の方が、他人を信頼して自分の資金を任せようとする傾向が強くなりました。またオキシトシンを投与すると、他人の眼の辺りに視線を向ける時間の総量が増えることや、他人のわずかな表情から情動状態を推測する能力が向上することが研究でわかっています。
これが自閉症スペクトラムの治療薬として期待されています。自閉症スペクトラムの患者さんにオキシトシンを投与すると、共感や社会的協力を評価する数値が改善したという報告があります。
このようにオキシトシンはママと赤ちゃんの愛情を構築したり、成長して社会活動をするようになってからも良い影響のあるホルモンなのです。
愛情ホルモン、こんなホルモンがあるんですね。驚きです。
ママとの関係だけでなく、大人になった時にも必要なホルモンなんですね。
このホルモンがたくさん出ている人は幸せ者だのん。
次に、ストレスに関するホルモンを紹介するのん。
ストレスホルモン コルチゾール
先程は、コルチゾールを悪者のような紹介をしましたが、実は人間には欠かせないホルモンです。
コルチゾールは、副腎皮質から分泌されるホルモンです。
コルチゾールは、朝に最も分泌され、朝の目覚めを促す1日のリズムをつくっています。
抗ストレス作用
ストレスを感じると交感神経を刺激し、体の緊張状態を保ちます。脈拍や血圧を上昇させて、脳を覚醒させます。
また、糖新生や脂肪の分解、抗炎症作用・免疫抑制作用があります。
お薬にステロイド薬がありますが、 コルチゾールをもとに創られています。
過剰な分泌が悪
ここまで聞くと、「いいホルモンじゃないか!」と思います。
コルチゾールは一時的なストレスに対応するために、正常な量が分泌されます。
しかし、長期間のストレス環境下では、過剰に分泌されたりすると、脳が分泌の抑制を支持し、濃度を低く保つように制御をします(これをネガティブフィードバックといいます。)。しかしながら、過剰なストレスを受け続けると、この機構が壊れてコルチゾールの分泌が慢性的に高くなり、これがうつ病、不眠症やうつ病などの精神疾患、生活習慣病などのストレス関連疾患の一因となることが分かってきています。
妊娠期のストレスが胎児に与える影響
コルチゾールによる赤ちゃんへの影響は妊娠期に既にはじめっていることがわかっています。
ママの慢性的な妊娠期のストレスは、生後のうつや不安、統合失調症、発達障害のリスクを増加させると考えられている。ストレスにより、ママの体内のコルチゾが胎児の神経前駆細胞の分裂や神経分化の抑制に関わるとされている。
実際に海外の研究では、妊娠したママが近親の死や重病など大きな心理的ストレスを受けた際、生まれた子どもの統合失調症 リスクが増加する、との報告がある。ちなみにそのような報告は、妊娠第1三半期(妊娠0〜12週)に多く報告されていました。ちょうど赤ちゃんの神経細胞が作られ、増殖している期間になります。
また、統合失調症だけでなく、発達障害も増やすとした研究結果があります。
1980 年から 1995 年の間に、アメリカで台風の被害にあった妊婦から産まれた子どもの自閉症のリスクが増加しました。また,離婚や転居などによるストレスや重度の不安状態は、子どものADHD 発症リスクを増大させるとの報告があります。あくまでマウスの実験ですが、妊娠中のストレスが子どものマウスの脳での炎症を自ら引き起こし、かつ引き起こしやすくなっていることがわかっています。そのことから妊娠中のストレスは、生まれた赤ちゃんの脳で炎症を引き起こしやすくなっており、脳機能や行動に異常を誘発している可能性が考えられます。
生後のストレスが赤ちゃんに与える影響
生後早い時期のストレスが後の精神疾患に影響している可能性を示唆した研究があります。
女の子に限定された研究すが、生後1年のうち早い時期のストレスが、子ども時代のコルチゾール濃度に関係していることがわかりました。また、子ども時代のコルチゾール濃度は、感情の制御にかかわ脳の2つの領域(扁桃体と前頭前野)に影響を与えて、思春期における不安や抑うつといった症状に関係していたことがわかりました。
早産児のストレスの影響も紹介します。
早産児は生まれてすぐ新生児集中治療室で過ごすことになります。そのためママとずっと一緒にいることができません。また健康状態や医療処置による安静の妨げや痛みを伴う場合もあります。さらに、医療機器のノイズやアラーム音、部屋の明るい光なども安静を妨げます。この状況が将来赤ちゃんのどの様な影響を与えるかと言うと、超早産児の30〜60%が生涯にわたり認知障害および社会的・情緒的困難を経験しますとの研究結果が出ております。(医療関係者の方々は我が子の様に、必死の思いで赤ちゃんをケアしております。新生児集中室で過ごすことが、危険だと伝えているわけではありません。早産による赤ちゃんの影響の研究結果を伝えているのみです。)。
過度なストレスにより過剰なコルチゾールが悪影響を与えているんだね。
ママが妊娠しているときでもその影響があるとは、驚きだよ。
ママと赤ちゃんというのは一心同体だのん。
おそらく生まれた後も、幸せな時はオキシトシンが、ストレスが溜まる部分ではコルチゾールがお互いに出るのん。
じゃあ、オキシトシンを出すにはどうすれば良いの?
それでは次に説明をしていくのん。
赤ちゃんとのやりとりが重要
ホルモンの働きを理解した次に、オキシトシンを増やし、コルチゾールを少なくする行動が必要になると思います。
ただやることは1つ。
赤ちゃんとやりとりをすること。これだけです。
ここで、赤ちゃんとの愛情あるやりとりの大切さを理解できる研究を紹介します。
マサチューセッツ大学の心理学者Edward Tronick教授が行った「能面実験」です。
能面実験
この実験で登場する人物は、ママと赤ちゃんの二人です。
まずママは、赤ちゃんを子供用椅子に座らせ、一緒に遊びます。
ところが途中で母親が後ろを向きます。
赤ちゃんは、「あれ、ママはどこを見ているの?こっち見ないの?」とママの顔を探しています。
その直後、ママが赤ちゃんに向かって振り向くと、ママの表情は一切ありません。
赤ちゃんはママを見つめ、びっくりした表情になります。「いつも笑ってくれているママは?」と言っている様子です。
それまで笑顔で笑って遊んでいた赤ちゃんが、慌てた様子でママに手を伸ばそうとしたり、何とかママの反応を引き出そうとします。でも母親は表情なく、子供を見ているばかりです。
いよいよどうしようもないとわかると、赤ちゃんは泣き始めます。見ていられないほどかわいそうな様子です。
けれども、影響を受けるのは子供だけではありません。
母親の表情にも、赤ちゃんの泣いている様子から不安が現れます。
ママの表情が愛情に溢れた笑顔に戻り、赤ちゃんも笑った様子に戻ります。
実験の様子は以上になります。ここで伝えたいのは「赤ちゃには愛情あるやりとりが必要」ということです。
赤ちゃんの目を見て、一緒に遊んで、笑い合うこと、抱きしめてあげること、言葉で愛を伝えることです。
それにより、愛情ホルモンであるオキシトシンが脳で産生され、赤ちゃんの脳の発達を促します。
愛情あるママやパパがこのような能面実験を日常で行うはずがありません。
ただ、一部の子供たちにとって能面実験は日常にあります。毎日、目覚めても無表情、それどころか怒りと憎しみに満ちた環境で生活していたとしたらどうでしょうか。
実験でわかるように赤ちゃんは大好きなママの笑顔が無くなるだけで、泣いています。
この様な状況は、赤ちゃんにとってストレスのかかる状況です。
こうした環境下では、コルチゾールのようなストレスホルモンが赤ちゃんの脳で産生され、赤ちゃんの脳の発達にとてもネガティブに働きます。
その結果は、認知発達や言語発達、行動、自己制御、感情の安定性、社会性の発達、精神的身体的な健康といった全ての面でネガティブに働きます。
ケアする人の影響が大きいという事は、遺伝的な要因、すなわち可能性の設計図として誕生とともに手渡された贈り物がそのままの形で育っていくわけではないと言う悲しい現実を意味しているのです。
だからこそ、ケアする人の責任は大変大きいのです。未来ある子どもですから。
遺伝的素因が環境影響によって変わっている過程からすれば、育ち(環境)によって自然(遺伝)を、もともとの設計図以上によくすることができないかもしれません。
けれども逆の、マイナスの効果は起こる可能性がある。初期の高いストレス環境は遺伝子の設計図を悪い方向に大きく変えてしまい、育ちつつあるのに恒久的に影響を与える。ただし、これはあくまでも絶えず続く慢性的な過酷なストレスの場合です。不機嫌で疲れた母親や父親が時々口にする(夜中の2時だよ、〇〇ちゃん。お願い頼むから寝かして!ああ、わかった!わかった!今行くよ!」の話ではありません。
ダナ・サスキンド「3000万語の格差」
赤ちゃんにとって、ケアする人の影響はとても大きいんだね。
どちらかというと、衣食住の責任が大きいと思っていたけど。。。
それがベースでさらに求めてくるというのはママパパは大変だよ。
ママとパパ、ケアする人は本当に大変だのん。
ただいつもやっていることを少し意識すればいいのん。
「●●ちゃん、大好きだよ。」「かわいいな〜」ということを赤ちゃんに伝えてあげればいいのん。
そうすれば・・・
赤ちゃんの脳神経細胞のつながりを作っていくことにもつながるんですね!
ママパパにもオキシトシンが出て、幸せな気分になれる、ですね?
そうだのん!
その言葉のやりとりが習慣化されれば、それが入り口にさまざまなやりとりが始まるのん。
それが「安心感」を作り、赤ちゃんの脳はさらに発達するのん。
なるほど。
いつも言っている、意識することですね。
知らないでやるより、知って意識してやるのでは違うのん。
今日は疲れたからそろそろ帰るのん。
じゃ。
(いつも通り、別れ際が一方的だな。)
ありがと〜また教えてね〜
まとめ
- 赤ちゃんの脳の発達の大前提としては、赤ちゃんに「安心感」を与えること
- 愛情ホルモン「オキシトシン」は、親と赤ちゃんの関係を築いてくれること
- ストレスホルモン「コルチゾール」は、赤ちゃんの脳には悪影響であること
- ママパパの愛情あるやりとりが安心感を生み出し、子の脳の発達を促すこと
いかがでしたでしょうか。
前回は赤ちゃんの生まれたからの脳の発達の仕組みを学びました。
今回は、赤ちゃんの脳の発達の前提である「安心感」を与えるために、各ホルモンの働きを学びました。
原理を理解すると、行動の軸ができ、意識した行動ができるのではないでしょうか?
ディラノ博士が言うように「知らないでやるより、知って意識してやるのでは違う」と言うのは案外合っているかもしれません。
この記事によって、少しでも読者の方々の意識と行動に変化があれば幸いです。
未来ある子供たちのためにも、共に学んでいきましょう!
それじゃ、Have a nice day!
【参考資料】
natureダイジェスト「オキシトシンの基礎研究は始まったばかり」
テルモ生命科学振興財団「抗ストレス作用や社会行動に関与するオキシトシン」
久納 智子「周産期におけるオキシトシン値の変化と母親役割獲得過程の関連」
Kao 「愛情ホルモン オキシトシン」
ヤクルト中央研究所 「コルチゾール」
宇田川 潤「妊娠期の母体ストレスと脳機能形成異常」
Cory A Burghy「Developmental pathways to amygdala-prefrontal function and internalizing symptoms in adolescence」
Medtronic「赤ちゃんのストレス」
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