今回は赤ちゃんの脳の発達の仕組みに関して勉強をしていきましょう。脳の発達の仕組みが理解できれば、意識して赤ちゃんとやりとりができ、それが我が子の可能性を開花させるベースをなりうるのです。それでは、共に学びましょう!
ティラノ博士、こんにちわ!
こんにちわ、こぶおくん。
妹とうまくコミュニケーションはとっているのん?
少し笑ってくれるようになったけど、いまいち実感がないんだ。
これまで赤ちゃんとの接し方とか教えてくれたけど、そもそも赤ちゃんの脳ってどう働いているの?
その部分は赤ちゃんとやりとりをするのであれば重要な点だのん。
今日はその紹介をしていくのん。
私たちはそれぞれ、1000億の脳神経細胞の可能性とともに生まれてくる。これが多様な可能性につながる。でも残念ながら、神経細胞同士のつながりがなければ、1000億の細胞も意味がなく、電線のない電信柱のようなものです。神経細胞が最適につながれば、高速のシグナルによっていうのは驚くべき力を発揮する。
ダナ・サスキント「3000万語の格差」
我々も含め、赤ちゃんは140億個という脳神経細胞を持って生まれてきます。基本的にこの量はその後に人生で増減はないと言われています(増減に影響を与える疾患等はあります。)。*細かい細胞を含めると1000〜2000億個と言われています。
ただこのままでは赤ちゃんの脳は発達しません。
では、脳が発達するにはどうすればいいのでしょうか?
それは、バラバラになっている「脳神経細胞がつながること」です。学術的には「シナプスが増える」と言います。
では、脳神経細胞がつながるためにはどうすればいいのでしょうか?
それは、赤ちゃんに「多くの機会(刺激)を与えること」です。結論、これがママとパパの役割になります。
多くの刺激があればあるほど、神経細胞がつながりを強化(シナプスが増加)し、それが脳の発達につながります。
もう少し脳神経細胞のつながりについて紹介をします。
赤ちゃんは生まれたから3歳まで、1秒ごとに700〜1000個の脳神経細胞のつながりができていると言われています。
このつながりが複雑な回路になり、その後の脳の働きに関わってきます。
例えば、見る力、話す力、聴く力、記憶力、運動能力、思考力や想像力、などになります。
例えば、記憶や感情の制御、行動の抑制などに関わる前頭前野のつながりは、生まれてから1歳までで急増し、ピークを迎えます。その後、8歳以降から徐々に減少することがわかっています。また視覚や運動などに関わる視覚野では、生後8ヶ月でピークを迎え、1歳半から減少し始めることもわかっており、脳の分野によって異なることがわかります。
減ることをネガティブに捉えるかもしれませんが、そうではありません。
脳は必要なつながりを残しつつ、そのつながりを強化していきます。一方で、あまり使わない不要なつながりを切り離します(学術的には「シナプスが刈り込まれる」と言います)。効率がいいですね。
前頭前野を例に取ると、つながりがピークに達する1歳ごろまでは、赤ちゃんにとって毎日が初めての体験です。その体験だけ、神経細胞のつながりが増えるです。そのため脳は過度な負担が掛けられパンク状態になっています。その状態を回避するために、あまり使わないつながりを切り離し、必要な部分だけを残してそこを強化していく、という効率の良い状態を作るわけです。
パンク状態か・・・。だから赤ちゃんは脳を休めるために1日に何回も寝ているのか。
それはわからないけど、脳が刺激を整理しているとも言われているのん。
ただ眠っている間も、外界からの言葉だけには反応しているという研究結果もあるのん。
まあとりあえずここで押さえておきたいのは、脳の発達には機会が必要なことだのん。
発達に必要な「機会」ってどんなことなの?
そこが大事なポイントだのん。
まずは脳が機会によって、どのように発達するかを紹介するのん。
目次
脳の可塑性
脳は外的な刺激に応じて、神経のつながりが変形します。これを「可塑性」といいます。
「可塑性」を粘土に例えている文献があり、わかりやすかったで紹介します。
粘土を握ると、一定の形に変わります。
このように外的要因に合わせて、形が変わることをいいます。
その外的な刺激は、脳が学習することによって起こります。
「学習」といっても、学校の授業で知識をつけてるような学習のようなイメージではありません。
学習とは経験による行動やその可能性の変化をいう。
知識の獲得や技能の習得が典型的例であるが,感情の形成や人格の形成なども含まれる。
前川 喜平 「高次機能−知能の発達」
少し難しい表現ですが、脳の「学習」を網羅している表現になります。
知識だけでなく、生活に必要な体の動きや感情や性格などの形成もされます。
学習をすることで神経細胞同士のつながりがより強く変化することで、情報伝達がスムーズになります。
そして情報伝達がスムーズな状態が持続することで「記憶」になります。
ここでも記憶というのは、単なる出来事や授業で覚えた知識だけでなく、運動機能の感覚なども入ります。
例えば、自転車を例に取ると、最初子供は自転車に乗れません。
繰り返し練習することで、脳が学習をします。脳の自転車に乗ることに必要になる神経細胞のつながりが強化されます。
そして練習の積み重ねで、徐々に乗れるようになってきます。この状態は、脳の情報伝達がスムーズになっている状態です。手や足の動かし方やタイミング、体幹のバランス、視線など多くの情報伝達が以前よりスムーズになっています。
その状態がさらに強化されると脳はそれを「記憶」し、難なく自転車に乗れるようになるというわけです。
最近、うちの次男くんも「泥団子」を作れるようになりました。最初は力加減がうまくできず、潰れたり崩れたりの連続でした。が、何度も作っているうちに、ちょうど良い力加減で握り、乾いた砂で固めて、また微妙な力加減で握っていく。この感覚であれば、このくらいの力加減ということが理解できたのでしょう。
神経細胞のつながりが作られ、強まるこの時期、赤ちゃんの能力が育ち、言葉を学ぶ力はケタ外れの大きさとなります。脳がこれほどの可塑性を持ち、異なる環境に合わせて変わっていく柔軟性を持つ時期は二度とない。この時期が次第に終わりに近づき、神経細胞のつながりの刈り込みが始まり出すと、適応力も少しずつ狭まり、新しい試みがどんどん難しくなってくる。例えば新しい言語を学ぶようにな事は歳をとるにつれてどんどん難しくなっていく。
ダナ・サスキンド「3000万語の格差」
このように人間が毎日が初めての体験をし、多くの刺激を受け入れ、脳が環境に柔軟に対応する時期は、赤ちゃんの時期しかないのです。それだけ赤ちゃんの時の「学習」は重要であり、我が子の可能性を開花できるかどうかにもつながります。そのことからママパパの役割は大変重要なのです。
脳というのはすごいね。学習の機会や外部要因に合わせて脳は変化していくんだね。
必要な部分は強化し、不必要な部分は取り除いていくというとても効率が良いのん。
この繰り返しが、ある機能に特化した部分を作り、その子の可能性を開花する可能性があるのん。
子供の可能性とはいうけど、外部要因だけでなくて、遺伝子はそこに影響を与えないの?
遺伝子ももちろん影響は与えるのん。
ただ子供の可能性を開花させるのは、遺伝子ではなく、生まれた後の「学習」が大きく影響を与えるのん。
その子の人生は、遺伝子だけで決まるのか?
答えはNoです。
生後数年と言う比較的短い間に、強靭で、けれども非常に壊れやすい脳の回路が作られ、人生の到達点すべてに影響します。この過程を決めるのは何でしょうか?
基本的には、遺伝、生後初期の経験、そして、一生続く遺伝と体験の相互作用です。良くも悪くも、これだけです。
ダナ・サスキンド「3000万語の格差」
引用にあるように、人の人生は遺伝子だけでなく、生まれた後の「学習」が成長に大きく影響しているのです。
これまで脳の仕組みを紹介をしたように、「生後初期の経験」が大きく影響があると考えられます。
簡単に言うと、赤ちゃんが「どのような特徴を持って育つか」は、遺伝子によって決められていますが、「どう育っていくか?」はママパパにかかっています。
Jack Shonkoff 博士(ハーバード大学小児発達センター)は、赤ちゃんの脳の発達を「家を建てること」に例えています。
建築が家の設計図を作るように、遺伝子が発達に必要なプランを作る。遺伝子に書かれた内容は脳神経細胞がつながっていく基本的なルールとなり、この構造の最初の設計図となる。
Jack Shonkoff 博士(ハーバード大学小児発達センター)
そうなると、設計図(遺伝子)が良くても、家を建てるための必要な「場所、建築材料、機械、道具、組み立てる人」が良くなければ、良い家は建てられないということになります。
良い機会がたくさんあれば、我が子の可能性を発揮させられることがきます。
素晴らしい機会と言っても、難しいことではありません。
「愛情を持って、赤ちゃんとやりとりをすること」、これがママパパが赤ちゃんに与えるべき学習なのです。
なるほど、遺伝子はあくまで設計図で、家を建てるのに必要なモノが学習なんだね。
そして、学習が最も大事な時期は、生後初期の時期なんだのん。
生後初期の大切さ
しかし、ここで注意をしたいのは、「学習をするからこの神経細胞同士のつながりが新しく作られる。」ではなく、「学習すると、既にあるシナプスのつながりが強化される。」です。なので逆説的ですが、必要ないとシナプスのつながりは弱いままです。そしてある程度の年齢になるとそのつながりは消失してしまいます。タイミングが大事という話です。
ここで視覚障害のあった2人の赤ちゃんの事例を紹介します。
1990年代初め、白内障で生まれた赤ちゃんがすぐに手術で視覚を取り戻すことができました。
その子は、生活に支障もなく、健康な赤ちゃんと同じように育っていきました。
一方、別の白内障で生まれた赤ちゃんは、8歳を超えて手術をし、視覚を取り戻しました。
しかし普通に見えていても、その子は視覚の障害は一生残るものであった、という報告があります。
何が言いたいかというと、生後間もなく視覚を取り戻した場合、視覚を司る脳の視覚野の神経細胞のつながりが強化され、スムーズな情報伝達ができた。これが健常人と変わらない生活を生み出したのです。もう一方の赤ちゃんは、生後初期〜8歳まで視覚による学習が全く無かったことで、脳は視覚野の神経細胞のつながりは「不必要」と判断したわけです。その結果、視覚野の脳神経細胞のつながりは切り離されてしまった又は弱い状態になっており、視覚を取り戻しても、スムーズな情報伝達ができず、障害が残ってしまったのです。
生後間もない赤ちゃんの視覚は、明暗の境目で形を捉える程度と言われています。その後、白・黒・グレーを識別し、1週間後には動きに反応し、ママパパの顔をじっと見るようになります。生後10週目ごろには目でモノを追うようになり、生後3ヶ月にはほとんどの色を識別できるようになります。その後、手を伸ばしておもちゃを触ったりして、視覚から手や足などとの協調する動作が見られるようになります。これは視覚に関連する脳神経細胞から手足の運動に関連する脳神経細胞につながりが強化され、スムーズな情報伝達ができていることを意味します。
このように赤ちゃんの視覚は、生まれて間もない頃から急成長しており、それに伴い脳神経細胞のつながりの強化が行われているのです。だからこそ、この時期に視覚からの学習が無く、脳に「不必要」と決められてしまうことは、その子にとって致命的なことなのです。
この事例に似た事例で、聴覚障害の赤ちゃんも同じような結果になったという報告があります。
生後間も無く聴覚障害が発覚し、手術をして聴覚を取り戻した赤ちゃんは健常人と同じように育つが、一定の年齢を過ぎて聴覚を取り戻しても、一生聴覚の障害が残るのです。
そのため、生後初期の体験というのは、その後の人生の重要な役割を持っているのです。
チャンスでもあり、弱い部分でもあるのです。
脳は効率がいいと言ったけど、使わないとその部分が弱くなっていくというのは怖いね。
だからこそ、ママパパの赤ちゃんとのやりとりの大切さが理解できたよ。
脳の発達の仕組みが理解できると、赤ちゃんとのやりとり重要性が理解できるのん。
博士がいつもいうように、知らないと知っているのではだいぶ違うよ。
そうだのん。
知らないでやっているのと、知って意識してやっているのでは大きく違うのん。
やっと、こぶおもわかってきたんのん。
今日もありがとう!早速、妹と遊んでくるよ!
でも何で遊ぼうかな〜〜、その点次回教えてね!
即行動、いいことのん。
次回は、脳の化学部質から考える赤ちゃんの脳に良いこと・悪いことを紹介するのん。
じゃ。
まとめ
今回は、赤ちゃんの脳の発達について学びました。
- 脳の発達は、脳神経細胞同士がつながり、その部分が強化されること
- 脳は可塑性で、学習の機会や外部刺激に合わせて、発達していくこと
- 人間は遺伝子ではなく、学習の機会により、可能性が開花されること
- 生後初期の学習の機会が、その後の人生に、大きく影響を与えること
いかがでしたでしょうか。
脳の仕組みは非常に興味深く、特に赤ちゃんの脳の発達は想像以上のものだったと思います。
脳の原理がわかっていれば、意識して赤ちゃんとやりとりができるのはないでしょうか?
「知らないでやるのと、知って意識してやるのでは違う。」というティラノ博士の言葉はあながち間違っていないと思われます。
この記事によって、少しでも読者の方がの意識と行動に変化があれば幸いです。
未来ある我が子のためにも、共に学んでいきましょう!
それじゃ、Have a nice day!
【参考文献、書籍】
前川 喜平 「高次機能−知能の発達」バイオメカニズム学会誌,Vol. 32, No. 2 (2008)
ダナ・サスキンド「3000万後の格差」