本日は、言語処理速度について紹介をしていきます。言語処理速度は、言葉を理解する上で重要な要素です。そしてこの能力は、幼い時のママパパの言葉の量に相関することがわかっています。それでは今日も共に学んでいきましょう。
こんにちは、ティラノ博士。。。
こぶおくん、こんにちは!
今日も何か悩んでるようだのん?
そうなんだよ。妹に話しかけても、あまり理解していないようなんだよ。
単純な言葉を伝えれば、理解しているようなんだけども。
それは言語処理速度が遅い可能性があるのん。
この力は赤ちゃんにも大事な力と言われているし、言葉の量に比例すると言われているのん。
今日はこの点を紹介して行くのん。
目次
言語処理速度とは?
言語処理速度とは、「知っている言葉にどれだけ早くたどり着けるか」を意味している。
その言葉を知っていると気づき、さらにその言葉の意味がわかるまでにどれだけかかるかの速さである。
例えば、イヌとネコの絵を見せて、「イヌを見てください。」と質問をします。
「イヌ」という意味を理解し、「イヌ」に絵を見るまでにかかる時間が、言語処理速度になります。
大人であれば、質問者の「イ」と、聞こえた瞬間に「イヌ」の絵を見る方が多いと思います。
一方で、2歳児では少し時間がいるのではないでしょうか?
この処理プロセスは、学習にとって重要な要素であると言われています。
既に知っている言葉を理解するのに時間がかかるだけではなく、後に続く言葉を理解できず、学習機会を損ねてしまうことがわかっています。
処理の速い子であれば、他者に言われたことに対して難なく理解し、対応できます。
しかし、処理の遅い場合、理解できなく、対応できない。さらにこの後に続く言葉も理解が困難になると言われています(機会の損失)。
この状態がが幼稚園や学校の授業だったらどうでしょうか?より差が生じてしまう可能性があります。
例えば、フランス語クラスで優秀な成績の日本の学生が、フランスに旅行した時のこと。
この学生がパリで出会った人と会話をしました。クラスで聞き慣れた先生の様な明瞭な話し方ではありませんでした。
その学生は、わからない言葉が途中出てきて「わかる」まで時間がかかってしまいました。
その言葉の意味が「わかった」時には、相手との会話は既に別の文章に移動していた。
処理速度が遅いために生じる損失の典型例。
1つの言葉の意味をなんとか思い出そうとしていると、そこから後の全ても失われてしまうと言う事例でした。
個人的にもこの経験はあります。TOEICのリスニングテストのこと。
分からない単語があると、その理解を脳が勝手に意識してしまい、その後に続く文章の理解ができなかった時の絶望感は忘れられません。
上記のただの会話やテストならまだしも、授業などで処理速度が遅い場合、その後の授業の理解度が下がりそうですね。
知っている言葉の意味を掴むのに、何秒かの遅れがあると、それだけで次の言葉の理解がかなり難しくなる。100ミリ秒、処理速度が速い、それだけのことが「あなたに学ぶ機会を与えてくれる」とファーナルド教授は言います。処理速度が遅い子供にとって損失は計り知れず、恒久的です。
ダナ・サスキンド「3000万語の格差」
なるほど、この状況が妹に起きているかもしれないね。
しかし、妹はまだ赤ちゃんだからいいけど、これが小学生だと恐ろしいよ。
僕は、授業を理解しているからいいけど。
学校の授業となると、他の子供もあるし、学習スケジュールもあるから取り残される可能性もあるのん。
ところでこの言語処理速度を上げるには、どうすればいいの?
そこがポイントのん。
それは結局、「ママパパの話しかける言葉の量」なんだのん。
その点を紹介するのん。
言語処理速度とママパパの言葉の量の関係
言語処理の研究者である Anne Fernald教授(スタンフォード大学)が幼児を対象に実験した結果
この研究において、言語処理速度と強く相関していた要素は「 1日に話すママパパの話す言葉の数 」でした。
2歳の段階で、言葉環境の少ない環境にいる子供は、語彙も少なく、言語処理速度も遅かったのです。
一方、言葉環境の多い子供は、語彙も多く、言語処理速度も速かったのです。
これはどの経済レベルのグループでも見られた。
この研究では、経済レベルの異なるグループで比較しています。
富裕層のグループと低所得層グループでは、低所得層グループの2歳の子どもでは、語彙と会話処理スキルが6ヶ月遅れていることがわかりました。
ただ研究者の報告では、どの経済グループの中でもママパパの話す言葉の量に差がありました。
言葉の量が多いほど、語彙が多く、処理速度が速かったそうです。
例えば、低所得者グループにおいて、1日にママパパが話す言葉の数は、670語〜12,000語と大きくばらついていたのです。
2歳ですでに差が出ているんだね。
そうだのん。生まれてからもう話しかけるという行為は赤ちゃんにとって大切な行為なんだのん。
ここで、言語処理速度の重要性を改めて痛感する研究を紹介するよ。
以前紹介した42の家族での言葉の量を観察した研究だのん。
3歳までの言語処理速度の重要性
ここで以前紹介をした、ハートとリズリーの42の家族での研究の、その後の知見を紹介します。
あの研究では、「多くの言葉を話しかけることで、子どもの能力(ここでは学力)が発達する」という結論でした。
そこで、4〜5歳の間に、多くの言葉を注いだ。
この流れであれば、子どもの能力が以前より大幅に伸びると予想します。
ところで、能力を高めることができなかったのです。
研究者たちの見解では、「子どもたちは既に、4歳以前の貧しい言葉環境の影響を受けていた。」
要約すると、「言語処理速度が遅ければ、例え多くの言葉を注いだところで、大きく子供の能力に影響を与えない。」という衝撃的な結果だったのです。
結局のところ、脳が言葉によってどれだけ育てられるかにかかっているのです。
Anne Fernald
3歳終わりまでの言葉の量の重要性がわかったよ。
そうだのん。これは驚きの結果だのん。
ということは、4歳以降に語彙を増やしても能力はあまり変わらないということ?
その点はまた次回紹介するのん。
今回は言語処理速度の重要性をまず理解して欲しかったのん。
言語処理速度が遅いというのは、ある程度理解した外国語を聞いた時の理解度というイメージだね。それは学ぶ機会、能力を伸ばす機会を失うということだね。
そうだのん。
だからこそママパパの言葉の量は本当に重要なんだんのん。特に3歳終わりまでのん。
それじゃ、またのん。じゃ。
なるほどな〜、早く帰って、妹に話しかけてみよ〜っと。
皆さん、お疲れさまでした〜。
まとめ
本日は、言語処理速度について学びました。
- 言語処理速度は、ある言葉を聞いてから「認知する」〜「理解する」までの速度のこと。
- 言語処理速度が遅いと、子供の学ぶ機会を損なってしまうこと。
- 子供の言語処理速度は、ママパパの言葉の量に強く相関すること。
いかがでしたでしょうか。
現状のエビデンスでは、4、5歳で子供の能力(ここでは学力)に差がつくという結果でした。
そして、それは3歳終わりまでのママパパの言葉の量に影響されるのです。これが現状でのエビデンスになります。
ママパパの言葉は偉大ですね。赤ちゃんに話しかける方法に関しては既にご紹介していますので、ご参考に!
ティラノ博士がいつも言うように、「知らないでやるのと、知って意識してやるのでは違う」と思います。
この記事によって、少しでも読者の方々の意識と行動に変化があれば幸いです。
未来ある我が子のためにも、共に学んでいきましょう!それじゃ、Have a nice day!
【参考書籍】
ダナ・サスキンド「3000万語の格差」