まだ言葉がうまく話せない一歳前後の赤ちゃんに、どの様に話しかけるべきでしょうか。過去の研究では、「コミュニケーションの基礎」が言葉の質を高めると言われています。そのことからやはりママパパの役目は重要です。それでは共に学んでいきましょう!
ティラノ博士、こんにちは。
この前の続きを教えてくれませんか?
(とりあえず、前回少し怒ったから丁寧に行こう。)
おや、こぶおくん。
前回ですが、どんな質問だったのん?
(相変わらず、すぐ忘れてるな。)
赤ちゃんにどう話しかけるべきか?ですよ。
うまく話ができない赤ちゃんと、どうやり取りをするのか、全くわかりません。
お〜そうだったのん。
それでは始めるのん。
目次
赤ちゃんとのやりとり
乳幼児の言語学習を専門とするキャシー・ハーシュ=パセック(Kathy Hirsh -Pasek)教授(テンプル大学心理学部)は、初期の言語学習における「コミュニケーションの基礎」が、言葉の質を高めると提唱しており、「共同注意」が親子のやりとりで重要であると伝えています。これは貧富の差に限らず、平等に与えられた機会になります。
共同注意
そもそも「共同注意」とは?
共同注意とは「他者と事物に注意を 配分し共有すること」を指し、具体的には「相手の視線を追って同じ対象物に対して視線を向ける現象」
大薮 泰 「共同注意という子育て環境」
分かるようで、分からないような。
要は、子供が見ている「モノ」とママパパが見ている「モノ」が同じ状態のことを、共同注意と言います。
この状態で、子どもとママパパのやり取りが続くことが言葉の質を高めることになります。
要は、子供が作った空想の世界(例えば、おままごと)に入ることで、子供とママパパと良質なコミュニケーションが取れるというわけです。
なるほど、難しい言葉を使っているけど、子供が集中している物事を一緒にしてやれば、
子供も自発的に考え、なるべく言葉を口に出すもんね。
そんだのん。
自分の作った世界だからこそ、自分の作った登場人物の感情を考えたり、ママパパの言葉も理解する。
そして、なるべくやり取りが継続するよう考えるのん。
概念的なものはわかったけども、もう少し具体的な内容を教えてくれない?
では、次に実際の共同注意の事例を紹介するのん。
共同注意と気もちの立ち直り
「食後のお片付け」に対して、嫌がる子どもが母親との共同注意の遊びによって、片付けができた事例を紹介します。
朝食後、ママが1歳9ヶ月の女の子にお片付けを依頼しますが、「イヤー!」との反応を見せます。
その後同じようなやりとりが続き、ママは怒り気味にベビーチェアを片付けようとすると「イヤー!ダメー!」と大声を出しました。
そこでママは「あ、そうだ。見て見て、もしかしたらウサちゃんもお腹空いてるかもね」と女の子と好きなウサギのぬいぐるみを指さします。
すると、女の子はニッコリ微笑み、ウサちゃんを持ってきてご飯を食べさせます。
女の子は楽しそうで、自分が「ママ」になったかのうような振る舞い。
ウサちゃんのご飯が終わり、ママは「ウサちゃんお腹いっぱいになった様だから、ご馳走さまをして、お片付けしてあげようか。」と言うと、さっきまでの反抗していた女の子は素直にお片付けをしました。
下記は、筆者のこの事例に対する考察です。
このように母親が子どもの気持ちに寄り添った共同注意をして遊ぶと、安心感を得て柔軟になった子どもの心はシンボルの世界で自由に遊び、親の心の世界に歩み寄った活動が出現しやすくなる。ここでも先ほど指摘した原則、つまり、子どもは自分の注意を優先した共同注意をしてくれる母親の振る舞いに巻き込まれ、その関係活動を維持するという原則が働いている。
大薮 泰 「共同注意という子育て環境」
個人的に少し難しい言葉が多いです。
ここからは私的な解釈になりますが、要は「子どもが好きなこと/やりたいことをしている時は、一緒にやることを心がける」こと。
この結果が「親子のコミュニケーションの習慣になり、反抗的な心を軟化させ、良好な親子関係になる」のだと考えます。
共同注意と共有世界の創造
共同注意に関する事例を1つ紹介します。オモチャを使って、子どもが親に自分の描く未来の世界を共有した事例を紹介です。(専門的には「シンボル共有的共同注意」と言われています。)
ママ 「パパ、明日は会社ですよ。パパと会社行くの?明日。」
子ども「あしたね〜、歩いて行くんだよ。」
ママ 「歩いて行くの?」
子ども「歩いて行くの。」
ママ 「電車に乗って行くの?」
子ども「電車に乗って行くの。三輪車に乗って行くの。」
ママ 「三輪車乗って、会社行くの? そうなの〜。」
その直後、子供は三輪車を探しますが、バスを持ってきます。
よくある他愛もない会話ですが、これが共同注意の1つになります。下記は、筆者のこの事例に対する考察です。
この場面で面白いのは、子どもが父親の通勤手段を電車から三輪車に置き換え、遊びを新しく創り出してい ることである。それは意味世界の創造的な拡張であり、文化を創出する心の働きの原型のようである。こうし た創造的なシンボリック遊びが生じるのは、自ら創出した世界と他者がもつ世界とのズレに気づき、その面白さを子どもが体験できるからだろう。また、そうしたズレを表現した自分に対する母親の驚きや戸惑いに気づ き、その情動を共有できるとき、面白さはさらに増幅されるのだろう。
大薮 泰 「共同注意という子育て環境」
これまた難しい言葉が並びます。
ここからは私的な解釈になりますが、要は「子供は現実世界をベースに、新たな世界を創り上げることができ、そこにママパパも一緒入ることを心がける。」
その結果、「子供は、ママパパのリアクションに喜び、さらに親子のコミュニケーションは活発になる。」
また、こうしたコミニケーションの要素が相互に働くことで、言葉を学ぶための最適な文脈が作り出されるとハーシュ教授はいっています。
なるほど、話はうまくできなくても、子供が好きな遊びを一緒にやり、言葉でのやり取りをすることが大事なんだね。
そうだのん。
でも、これってほとんどのママパパがやってるんじゃないかな?特に新しくないけど・・・。
確かにこぶおの言う通り、我が子を愛するママパパはやっていると思うのん。
いつも言っているけど、知らないでやっているのと、知って意識してやるのでは違うのん。
(やば、怒った)
そうですよね、理解していればなるべくやるようになりますもんね。
ちなみにこの共同注意は何歳くらいからできるようになるんですか?
日本の報告では、既に新生児で始まっているとの報告があるのん。
今日はこの後仕事だから、また明日教えたあげるのん。
じゃ。
(相変わらず、強引な別れだな)
今日はいろいろ教えてくれてありがとう!
まとめ
本日は、まだ言葉がうまく話せない子供と、言葉の質を高めるやりとりのポイントを紹介しました。
- 子供が見ているモノと、ママパパが見ているモノが、同じ状態を共同注意ということ。
- 共同注意の中、ママパパはリアクションを取り、やり取りをなるべく継続をさせること。
- その行為が親子のコミュニケーションを習慣化させ、さらに良好な親子関係になること。
既にできているママパパは多くいらっしゃると思います。
ただ、ここまで理解して子どもとやり取りをしているママパパは多くはないかと思います。
ティラノ博士がいつも言うように、「知らないでやるのと、知って意識してやるのでは違う」と思います。
この記事によって、少しでも読者の方々の意識と行動に変化があれば幸いです。
未来ある我が子のためにも、共に学んでいきましょう!それじゃ、Have a nice day!
参考文献
大薮 泰「共同注意という子育て環境」
ダナ・「3000万語の格差」