「保育園に行く時間なのに、
服を着ずにおもちゃで遊んでいる」
「歯を磨かないといけないのに、
テレビを見ている」
ご家庭でこんな経験はないでしょうか。
本当は、しなければいけない!
とわかっていても、実行に移せない。
このような状態は、子供に限らず、
誰しもがあると思います。
これは「自己制御能力」が低い可能性があります。
今回は自己制御能力を学びましょう。
この力を理解することで、
我が子の自己制御能力を高めるために、保護者のはたらきかけを学ことができます。
この力は、自分の決めた目標に対して、自身がやるべきことを自分で考えて、 実行する力につながります。
それでは共に学んでいきましょう!
こんにちは!
ちょっと聞きたいことがあるんだけども。。。
妹が保育園に行く時間になっても全く準備をしてくれないんだ、なんでだろう。
こんにちは!こぶおくん。
いつも熱心に妹の成長を考えているのん、すごいことのん。
それは自己制御能力の発達段階になるかものん。
自己制御能力?
自分を抑える力ですが?
半分合っているのん。
これは社会で生きていくために必要な能力だのん。
では早速、自己制御能力について紹介するのん。
目次
自己制御能力とは?
自己制御能力とは、一体なんでしょう。
一言で言えば、自身をコントロールする能力になります。
「3000万語の格差(著ダナ・サスキンド)」で紹介されているのは、次のような行動になります。
- 誘惑に負けないように行動できる
- 自身の怒りを抑えられる
- 衝動的に誰かを叩かないように行動できる
一方、日本の研究者は、次のように自己制御能力を定義しています。
幼児の自己制御機能には、「自分の意思や欲求を明確に持ち、これを他人や集団の前で表現し主張する」という自己主張的側面と、「集団場面で自分の意志や欲求を 抑制・制止しなければならないとき、これを抑制する」 という自己抑制的側面がある。
「幼児の自己制御機能に関する研究の動向と展望」前田 亜由美
少し難しいですね。
要は、周りの状況を判断して、自己主張したり、自身の欲求を抑えること(自己抑制)ができることになります。
自己制御能力のメリット
実行力
自分自身を安定に保ち、課題解決に向かう実行力に繋がります。
自分の衝動的な考えや行動により、マイナスな行動を抑えることができるようになります。
その結果、自身のやるべきことを冷静に考え、それに取り組むことになります。
一方で、友達を叩いてしまって、皆で取り組んでいた劇の練習ができなくなってしまう。
友達と遊んでいて、自分のおもちゃが取られ、怒りで叩いてしまい、関係が悪化してしまう。
怒りが抑えられず、会議中に退席してしまった。などが自己制御が低い状態にあります。
向社会的行動
向社会的行動とは、「利益を求めずに、他者が恩恵を得るように尽くす行動」のことです。
いわゆる、思いやりのある行動になります。
幼児でもその行動は確認されており、自己主張と自己抑制が共に高いと、その行動が他の幼児よりも、より多く確認されています。
そしてその傾向は自己主張よりも、自己抑制が高い幼児でより多く確認されています。*1
一方、自己主張はするが自己抑制はしない幼児は、仲間から援助を依頼される機会が少ないことが示されています。*2
思いやりのような行動にも影響を与えるんですね、
社会で生きていく為には、必要な能力ですね。
そうだのん。
自己制御能力が大切な能力であることを理解で切るのん。
次に自己制御能力の発達過程について紹介するのん。
自己制御能力の発達時期
いつから発達するのか?
自己制御能力は3歳以降から発達すると考えられています。
乳児の頃は自身の好きなように行動しても、優しいママやパパがそれを受け入れてくれます。
ある程度の許容範囲ですが。
しかし、幼児になると周りには多くの登場人物が現れます。
幼稚園の先生、クラスの友達や上級生達や下級生達、自身の弟や妹も。
乳児の頃のように好き勝手行動をしても、全て受け入れてくれることはありません。
また自身の行動が、何のために?どんな影響があるか?を考える場面が増えます。
例えば、遊んでいたおもちゃを「貸して欲しい。」と言われた時。
自分の遊びたい欲求が強ければ、貸してあげない。その後、取り合いになる可能性があります。
自分の遊びたい欲求もあるけど、貸してあげないといけない。
その場合、自分の欲求を抑え、友達と交互で遊ぶかもしれません。
実際に国内での研究にて、おもちゃの取り合いについて、3歳と5歳の幼児を比較をしています。
結果は5歳児の方が相手の欲求も考慮して、相手と折り合いをつけていました。
特に、「交互でおもちゃを使う」という提案を多くしていたそうです。*3
このことから自己制御能力は、生活する上で登場人物が多くなる、幼児から発達すると考えられています。
3歳から自己制御能力は発達するんですね。
確かに幼稚園から世界がかなり広くなりますもんね。
社会で生きるはじめの一歩だのん。
一人では生きてはいけないからこそ、人と関わる自己制御能力は必要だのん。
次に、自己制御能力の発達に関するママパパと子どものやりとりについて紹介するのん。
ママパパとのやりとり
ママパパとのやりとり
自己制御能力は、家庭でのママパパとのやりとりが大きく影響をすると考えられています。
ロシアの心理学者 レフ・ヴィゴツキーは自己制御能力の発達に関しての先駆者でした。
彼は、子どもとの日々のやりとりの中で、ママパパの命令やルールの提示は、子どもの自己制御を発達させ、それが子ども自身の自己制御の目安になる、と提唱しました。
ママパパの自己制御につながる目安を知ることで、子ども達がそれを理解し、自分をコントロールをしていくことになります。
そのため、ママパパ自身は、生活の決まりごと(ルール)を子どもと創り、共有することが、我が子の自己制御能力を育てることにつながります。
自己制御能力へのマイナス要因
家庭でのママパパと子どものやりとりにおいて、マイナスな要因があります。
- 否定的なやりとり
- 少ないやりとり
否定的なやりとり
ママパパとのやりとりが否定的だと、子どもにとってマイナスなストレスのある環境で過ごすことになります。
これが自己制御能力に悪影響を与えることになります。
自己制御能力が適正でなければ、先生の言うことに集中ができない状態になります。
それは授業も集中できず、学習が身につかないことになります。
別の項でも記載しましたが、授業についていけなくなると、その後の授業も理解できない状態になります。
それが早ければ早いほど、将来大きな影響を引き起こすことになります。
しかもそれはクラスの他の子供達にも影響を与える可能性があります。
だからこそ幼少期から自己制御能力を育てることを意識したほうが良いと考えられます。
少ないやりとり
ママパパとのやりとりが少ない子どもは自己制御能力が十分に発達しない、との報告があります。
アメリカにて人工内耳移植手術を受けた子どもたちを対象に行った研究があります。
耳が聞こえない子どもが対象になっていますので、ママパパとの言葉のやりとりがほとんどない子ども達になります。
その子ども達は、手術をして言葉を聞けるようになりました。
結果、言葉を聞くことは子ども達の言葉のスキルを伸ばすことにつながりました。
この結果は予想できそうですね。
面白いことに、自己制御機能や実行力の発達にも影響を与えたのです。
耳が聞こえ、言葉のスキルが向上し、相手とのやりとりができるようになったことで、このような力の発達につながったのではないかと考えられます。
このことからもママパパ(保護者)と子どものやりとりが、子ども達の自己制御能力を発達させるのです。
ママパパ(保護者)は子供のサポート役
ママパパ(保護者)は、あくまで子供のサポート役です。
子供が間違ったことを言っている、行動している場合は、サポート役として間違いを正す。
これが子どもの自己制御を育て、自立して生きていけるように成長をさせるのです。
そのため子どもとのやりとりを日々行い、子どもの考えや行動を敏感に捉えること。
これがサポート役として最初のステップになります。
がんばりましょう!
やりとりはやりとりでも、温かく見守るようなやりとりがいいんですね。
そうだのん。
これまで学んできたように、否定的なやりとりややりとりが少ないことは、
自己制御能力にも悪影響を与えるのん。
具体的にはママパパ(保護者)は子どもと、どのようなやりとりをすればいいんでしょうか?
それでは、具体的なやりとりについて研究結果があるから紹介するのん。
どんなやりとりが必要?
少しのストレスと安心感
ママパパ(保護者)とのやりとりが我が子の自己制御能力を伸ばすと伝えました。
では、どのようなやりとりが効果的なのでしょうか。
結論、「決まりがある中でも、子供が安心感を持つやりとり」が良いとされています。
具体的には、下記の2つのやりとりが必要とされています。
- 統制 :ママパパ(保護者)が子どものために良い、と考える行動やルールを強いる行為
- 応答性:子どものやりたい事に気づき、それをできる限り満たしてあげる行為
統制が強すぎると、子どもへ過度のストレスになり、自己制御能力の発達にマイナスになります。
もちろん過度のストレスは、他の能力にもマイナスな行為になります。
一方、応答性が強すぎると、甘やかしや過保護の行為となり、これもまた自己制御能力の発達にマイナスになります。
丁度良いところを子どもと共に話し合いつつ、ママパパとしての一線を引くことが大事だと考えられます。
それが難しいのですが・・・・。
エビデンス
統制と応答性に関して紹介をしましたが、その根拠となるエビデンスがありますので、紹介をします。
いずれも幼稚園児を対象とした研究になります。
- ママの統制的な行為が中心であると、自己主張の発達にマイナスであった。*4
- 自分の思い通りにさせようとする統制の行為は自己主張にマイナスに働き、我が子の言いなりになる甘やかしもマイナスに働いていた。*5
- 両親が共に統制が強い行為である幼児 は、攻撃行動が最も多く、両親が共に統制と応答性のバランスが良い場合、幼児は攻撃行動が最も少ない傾向が見られた。*6
- 幼児の自己抑制に対して、パパの非難的な行為が影響を与えていた。特に男児に対して、 自己抑制は低いことがわかった。一方で、幼児の自己主張については、ママパパの養育態度の影響は見られなかった。*7
結果が矛盾する部分もありますが、少なくともママパパ(保護者)の統制と応答のバランスの取れたやりとりは自己制御能力の発達に影響を与えていることがわかっています。
では、他に要素があるのか?
1つあります。
「ママの育児不安」です。
ママの育児不安
国内の研究結果では、ママの育児不安があると、子どもの自己抑制が低い傾向にあった、との報告がありました。*8
この研究では、376名のママを対象にアンケートを行い、子どもの自己抑制について分析を行いました。
アンケートでは、ママの育児不安の高さと養育態度(統制か応答性かそれともその中間か)によって、子どもの自己抑制の高さを検討しています。
結果、母親の育児不安が低く、養育態度が統制かつ応答性がある場合(バランスの良い養育態度)に、幼児の自己抑制得点が高くなること が明らかになった。
一方、育児不安が高いと、子どもの自己抑制得点が低いことがわかった。
そして、統制が強い場合も、子どもの自己抑制得点が低く、育児不安と統制が強いことは独立して、子どもの自己抑制得点を下げる独立因子であることがわかった。
また、統制が強いの母親の場合、育児不安が高い と、幼児の自己主張得点が特に低下することが明らかに なった。
これはパパの研究結果ではないので、パパに関してはなんとも言えません。
ただママの影響力は非常に大きいんだと理解させられる研究結果になります。
育児不安
そもそも育児不安とは?
文字の通りですが、「育児をすることに対する不安」になります。
上記で紹介した研究では、下記の8つの質問から、「非常に当てはまる(4点)、まあまあ当てはまる(3点)、少し当てはまる(2点)、全く当てはまらない(1点)」で答え、平均点を算出します。
その平均点が2.11点より高いと育児不安が高い群、2.11点より低ければ育児不安が低いと判断したとのことです。
育児不安尺度「母親の養育態度及び育児不安が幼児 の自己制御機能に及ぼす影響」 鈴木 亜由美
- 何となく育児に自信が持てない。
- 子育てに失敗するのではないかと思うことがある。
- 育児について色々心配なことがある。
- 母としての能力に自信がない。
- この先どう育てたらいいのか分からない。
- どうしつけたら良いか分からない。
- よその子どもと比べて、落ち込んだり、自信をなくしたりすることがある。
- 子どもの発育、発達が気にかかる。
2.11点の根拠は、全研究参加者の平均値が2.11点だったからです。
一度やってみてもいいかもしれません。
ママパパ(保護者)に関する面白いエビデンス
ママパパ(保護者)の養育態度は、子どもへの自己制御と自己抑制の影響に、性差があったことがわかりました。
これは幼稚園と保育園に通う3〜5歳児489名を対象に、担任教師とママパパが、子どもの特性とママパパの養育態度について、評価と分析をしています。*9
子どもの特性は、自己抑制/自己主張/思いやり/攻撃性の4つに分けて評価をしていました。
ママパパの養育態度は、受容/統制/矛盾/実権の4つに分けて評価をしています。
結果として、女子よりも男子の方が少し厳しく育てる方が自己制御(自己抑制と自己主張のバランスが良い状態)が発達することが示唆されています。
またママの厳しい養育態度は、特に攻撃性が形成されることがわかりました。
もう一点気になるのは、ママパパ(保護者)の矛盾しない養育態度が、男子の自己制御の発達にプラスの影響を与えていたことです。
ママとパパ(保護者)は、定期的に養育態度について目線合わせの必要があることがわかります。
主な結果を下記に記します。
- ママパパ(保護者)の受容的な養育態度は、女子の自己抑制の発達に関与していること
- ママパパ(保護者)の統制がゆるい場合、男子の自己主張の発達にマイナスの影響を与えていたこと
- ママパパ(保護者)の統制的な養育態度は、女子の攻撃性の発達に関与していること
- ママだけが統制的な養育態度の場合、高い攻撃性を形成させていたこと
- ママパパ(保護者)の矛盾しない養育態度は、男子の自己抑制と自己主張の発達にプラスの影響を与えていたこと
下記に言葉の定義を記載します。
子どもの特性4つ
- 【自己抑制】つらくても我慢する/待つことができる/やりだしたら最後までがんばる/という特徴
- 【自己主張】よい意味での自己主張。正しいと思うこと/いやだと思うこと/やりたいこと/を主張できる特徴
- 【思いやり】動物や植物を育てたり、自分より小さいもの、弱いものの世話をしたり面倒をみたりする特徴
- 【攻撃性】活動的で行動が荒々しく、乱暴で、他の子を傷つけたりする特徴
この自己主張と自己抑制の両方をあわせて「自己制御」。
この二つがバランスよく発達することが自己制御機能の発達にとって望ましいと考えられる。
ママパパ(保護者)の特性4つ
- 【受容】子どものことが好きで,子どもの気持ちや行動をよく理解し、優しく受け入れるという養育態度
- 【統制】親自身の気持ちや、欲求を強く子どもに押しつける養育態度
- 【矛盾】時と場合によって、コロコロ変わる一貫性のない養育態度
- 【実権】家庭内にて実権を握っているのが父母どちらかを表している
上記は2001年の研究です。
2014年に養育態度について新たな尺度が出ておりましたので、ご参考にしてください。
「幼児期から青年期の子どもをもつ親の 養育態度の検討」加藤 道代、黒澤 泰、神谷 哲司
女の子と男の子で、自己制御能力の発達の仕方が異なるのは驚いたな〜。
とりあえず、甘やかし過ぎず、厳し過ぎず、というのがいいんですよね?
そうだのん。
ただ、その加減が難しいのん。
そこで「自分ルール」を決めておくといいのん。
「悩んで助けを求めてきた時にヒントを与える」などのルールだのん。
それはママパパ(保護者)で認識を一致させるにも、定期的に話し合う必要があるのん。
なるほど、確かに。
まあなんとなく知っていたような気もするけどね。
一般的には、甘やかし過ぎず、厳しくし過ぎずと言うのは知れ渡っているのん。
ただ「知らないでやるよりも、理解して意識してやる。」方が、行動をするときに自己制御能力の発達を意識して取り組むことができるのん。
(やべ、怒ってる)
その通りですね、すみません!
ところで、自己制御能力の次は何を学ぶんですか?
え・・・(もう帰らなければ)
この後、仕事があるのでもう帰るのん。
また今度ね、じゃ。
あ、まってよ〜〜。
またいろいろ教えてね〜〜〜
ありがと〜
まとめ
- 自己制御能力が高い状態とは、主張と抑制がバランス良くコントロールできること
- 自己制御能力は3歳ごろから発達し、実行力や向社会的行動に好影響を与えること
- ママパパの愛情ある温かいやりとりと適度な強制力が、自己制御能力を高めること
いかがでしたでしょうか?
今回は、自己制御能力について学びました。
自己制御能力は、誘惑の多い中でも、自身をコントロールし、目標に向かってやり抜く力になります。
他人のレールを生きるのではなく、自分自身で考え、自ら行動する。
そんな自律した人間に成長する力になるのではないでしょうか。
施肥、我が子に持ってほしいスキルの1つです。
ティラノ博士が言うように、「知らないでやるよりも、理解して意識してやる。」では、だいぶ行動や継続力も変わるのではないでしょうか?
この記事によって少しでも読者の方々の意識と行動に変化があれば幸いです。
それじゃ、Have a nice day!
【参考資料】
非営利用語辞典 「向社会的行動」
*1:「幼児の向社会的行動と自 己制御機能との関連」関 清佳・松永あけみ
*2:「幼児の自 己制御認知タイプと向社会的行動との関連」伊藤順子・丸山(山本)愛子・山崎晃
*3:「物の取り合い場面における 幼児の自己調整機能の発達 発達心理学研究」長濱成未・高井直美
*4:「幼児期の自己制御機能の発達(1)―思いやり、攻撃性、親子関係との関連―」森下正康
*5:「母親の養育態度と幼児の自己制御機 能及び社会的行動との関係について」戸田須恵子
*6:「父親・母親の養育態度と幼児の攻撃行動との関連」中道圭人・中澤潤
*7:「幼児期における自己制御機能発達に及ぼす父母の養育態度の影響」尾崎康子・小野由加利
*8:「母親の養育態度及び育児不安が幼児 の自己制御機能に及ぼす影響」 鈴木 亜由美
*9:「幼児期の自己制御機能の発達(3)」森下 正康