ママパパのやりとりが子どものGRIT(やり抜く力)を育てる

子どもの習い事が続かない。やると決めたのにあきらめてしまう。やり始めたのに途中でやめてしまう。

そんなことはないでしょうか。

それは子どものGRITが別の方向に向いている可能性があります。

GRITは誰にでもあります。

ただ、GRITが別の方向に向いてしまうと、途中でやっていたことをやめてしまいます。

わがこが、自分の目標・夢をあきらめずに立ち向かい、実現できるような人生を送ってほしいと思いませんか?

ママパパは、我が子のGRITの方向を軌道修正するサポーターです。

それを理解するため、今回はGRITについて学んでいきたいと思います。

それでは共に学んでいきましょう!

目次

詳しく言うと、下記の4つの意味になります。

  • Guts:困難なことにも立ち向かう度胸
  • Resilience:苦境にもめげずに立ち直る復元力
  • Initiative:自ら目標を見つけて取り組む自発性
  • Tenacity:最後までやり遂げる執念

ペンシルベニア大学 Angela Lee Duckworth 教授が提唱した言葉になります。

Duckworth教授は「人生において成功の鍵を握っている能力」を研究し、成功している人の共通点を検討しました。

その結果、「何事にも諦めずに長期間忍耐強くやり抜く能力」が要因だということがわかりました。

それがGRITです。

GRITは、生まれ持った才能や環境だけが成功の要因ではなく、自らの努力によって知性や能力が伸び、成功することを意味しています。

子どものGRITをどう育てるか?、は未だわかっていないません。

しかし、研究者達は研究を続けており、GRITに影響を与えている要素について紹介をします。

「成長できる」という考え

シカゴ大学チャータースクールにおいて、自己に対するマイナスの固定観念が成績に及ぼす影響を調べた研究があります。

能力は伸びると教わった生徒は、そう教わらなかった生徒に比べ、テストの成績が平均点よりも高かったのです。

そして2012〜2014のチャータースクールの生徒の大学進学率は100%だったそうです。

何が言いたいかというと、「困難なことでも努力をすれば乗り越えられる」という考えがあれば、自身の持っている固定観念をも打ち破ることができるということです。

その元となるのは「自身の能力は成長する」という考えになります。

この考えにより成功体験を重ねるごとに、GRITが成長し、「大学進学はできない」という固定観念を打ち破ることになる、ということが考えられるのです。

「こんなこと俺にはできない」と思っていたことができるようになると言うことになります。

子どもの目標や夢を実現する上で、重要なスキルの1つになるかと考えられます。

ほめ方

子どもへのほめ方に関する研究(アメリカ)により、GRITが伸びた事例を紹介します。

こちらは言語発達長期追跡プロジェクトの一環で、乳児期のほめ言葉の研究を行いました。

1〜3歳の子ども達が保護者から受けたほめ言葉が、5年後、子ども達にどう影響しているかを検討をしました。

この研究では、ママパパのほめ言葉の違いで2つのグループに分けて、検討をしています。

「頭いいね!」という人中心のほめ方グループ vs「頑張ったね!」という努力中心のほめ方グループ

結論、努力中心のほめ方をされた子ども達の方が、小学校のテスト結果が良く、GRITの考え方が持つ傾向になっていたのです。

まずこの研究で興味深いのはママパパのほめ方でした。

ママパパ達は、我が子が14ヶ月になるまでに、2つの「ほめ方のスタイル」が分かれていたのです。

  • 頭の良さ」という、人中心のほめ方をするママパパ
  • 努力の過程」という、努力中心のほめ方をするママパパ

次に、5年後、子ども達にはどのような影響があったのでしょうか。

「努力の過程」をほめられる言葉が多かった子ども達ほど、「人は成長し、能力や知性は伸びる」という考えを持つ傾向にありました。(「頭の良さ」をほめられる言葉が多かった子ども達と比べ)

そしてそれは学力に影響を与えました。

「人は成長し、能力や知性は伸びる」という考えを持つ子ども達ほど、小学校2〜4年生の算数と読解力の成績が良かったのです(相関あり)。

成果に対して、努力の過程をほめる。

子ども達の「あきらめずに努力をする(GRIT)ことで能力は向上する」というを考えを育てた考察されていました。

何が言いたいのかというと、人中心でほめるか、過程中心でほめるかで、子どもの思考に変化があるのです。

またこの研究をもとに多くの研究が取り組まれ、結果が出ています。

人中心のほめ方で育った子どもは、困難な壁にぶち当たり、壁が高くなる程、諦める傾向にありました。さらに、人中心でほめられた子どもは、失敗するとその後うまくできず、失敗を重ねる傾向がありました。また他者から「頭が良い」と認めてもらいたいがために、成績について嘘をつく傾向も見られたのです。

こぶお
こぶお

確かに、過程中心でほめた方がいい。というのはよく聞くよね。
他には?

聞いたことあると思うけど、その理由を知っていたのん?
理解することで、意識して行動できるはずのん!

Dr.ティラノ
Dr.ティラノ
こぶお
こぶお

あ、ごめんなさい!(やべっ、怒ってる。)
確かに、そういう背景があったんだね。他にはあるんですか?

分かればいいのん。
次は日本の大学生を対象にした研究結果を紹介するのん。

Dr.ティラノ
Dr.ティラノ

粘り強さ と 興味

「粘り強さ」と「興味」がGRITに影響を与えるという研究が国内で行われていましたので紹介をします。

4年制教育大学の学生170名(男性80名、女性 90名、平均年齢は19.6歳)を対象に質問紙調査を行い、何がGRITに影響を与えたのか?を分析しました。

結果、GRITは「努力の粘り強さ」と「興味の一貫性」とによって構成されていることがわかりました。

そしてこの2つは何によって高められているか、もわかりました。

粘り強さ

増大的知能観を持つ人は、努力の粘り強さも高くなることも分かりました。

増大的知能観とは、困難な事柄に対して「原因は自分の努力不足」と捉え、異なる方法を用いて解決しようとする考え方です。

一方、その対義語は「実体的知能観:失敗の原因は自身の能力不足であり、変えることができない。」と捉え、困難に対して回避的になる考え方です。

興味の一貫性

特殊的好奇心が高い人は、興味の一貫性が高いことがわかりました。

また、特殊的好奇心は「粘り強さ」を高めていたことがわかり、この好奇心はGRITを伸ばす働きがあることになります。

この特殊的好奇心とは、「1つの物事を追及していく中で生じる微妙な差や矛盾に対しての興味のこと」をいいます。

スポーツ選手や研究者がこの好奇心が高いと言われています。

野球の投手を例に取ります。

一生懸命練習したのに、試合に負けてしまった(差や矛盾)。

勝つために、自分のスライダーをさらにスピードを高め、曲げるためにはどうするか?(好奇心)

そのため、負けた挫折や失敗が無気力につながることなく、さらなる探究心につながり、粘り強く努力ができると考察されています。

一方、その対義語「拡散的好奇心(初めて見たものに抱く興味)」は、興味の一貫性を抑制する働きをしていたのです。

GRITを育ててにくくする方向に。

その他の影響要因

  • 楽観性が努力の粘り強さを高める傾向にあった。
  • 要求の厳しい子育て家庭だと、興味の一貫性が低くなる傾向にあった。
  • 支援の多い子育て家庭だと、努力の粘り強さが高くなる傾向にあった。

上記3点は、海外の研究にてGRITに影響を与えていた要因でもあります。

今回紹介した試験では、テスト方法が異なり、傾向に留まったのでは、という考察がありました。

こぶお
こぶお

増大的知能観や特殊的好奇心という難しい言葉が出てきたなあ。
結局、この2つはどう伸ばせばいいの?

これがまだわかっていないんだのん。
そのためには長期の観察期間と莫大な資金が必要だのん。
だから実行は不可能に近いのん。
ただその影響する要因がわかったのであれば、ヒントになるのん。

Dr.ティラノ
Dr.ティラノ
こぶお
こぶお

過程をほめる・差や矛盾に気づいて探究する・努力不足の認識・楽観性・ママパパの支援ですか?

おお、かなり要約してくれたのん。(すごっ)
このポイントが理解すれば、こぶおくんも妹さんとのやりとりに取り入れられんじゃないのん?

Dr.ティラノ
Dr.ティラノ

「3000万語の格差(著:タナ・サスキンド)」では、ママパパ(保育者)は「子ども達のGRITの向きを正しく軌道修正すること」と提唱されていました。

GRITを0から育てるのが、ママパパの役目ではなく、GRITの方向を正しい方向に変えるのです。

そもそもGRITは全ての人の中にある、とのことです。

例えば、ゲームをしている、自転車に乗ろうと練習している、赤ちゃんが積み木を掴もうとしている、などです。

では、正しい方向とは?

それはママパパが「我が子になってほしい方向」です。

これはママパパによって異なります。

例えば、「優しい子に育ってほしい」「自分の興味を追求してほしい」「野球をやってほしい」など。

それを動機づけることがママパパの役目と紹介されています。

我が子が目標を達成する過程で、GRITの方向性を変える誘惑が多くあります。

そのGRITの方向を軌道修正してあげることになります。

子ども自身がGRITの方向を軌道修正できるまで。

ここからは1事例ですので、参考程度にしてください。

我が家の長男くん(年長)のスイミングでの事例です。

スイミングでは2ヶ月に1回進級テストがあり、進級できなくても、頑張って練習している長男くんです。

3歳からスイミングに通い、「水が怖い」と泣きながら通いつつ、かれこれはや3年。

今では15級に進級し(最初は20級)、好きなスポーツになりました。

ストレートとはいきませんが、同世代の子ども達の中でも少し早く進級しています。(毎週見学しているため分かります。)

長男くんのスイミングにて、GRITが見え隠れしていたと思い出します。

私が意識したことは下記の4点です。

  • 進級した際には、「よく頑張ってたな!どんな気持ち?なんで受かったのかな?」と、やりとりをしたこと。
  • 進級できなかった時、「毎週よく頑張ったよ、どんな気持ち?なんで受からなかったのかな?」と、やりとりをしたこと。
  • 長男くんの「気持ち」と「なんで?」を考えた理由をノートに書いていたこと
  • 自主練習をほめたり、アドバイスをあげていたこと

当初は、理由を聞いても「わからない。」との反応が多かったです。そりゃ3歳ですからね。

「先生の言うことを聞いて練習してみよう」とアドバイスをしていました。

その後「手足がまっすぐになっていなかったから。」「頭が耳まで入っていなかったから」と理由が言えるようになりました。

それを忘れないように彼のノートに、その日に一緒に「気持ち」と「進級できなかった理由」を書いていました。(差異の気づき、楽観性、支援)

すると、その部分を改善しようと家のお風呂やスイミングの自由時間で練習している彼がいました。(努力不足の認識)

その練習している部分を「一生懸命練習してえらいな。練習すれば絶対進級できるよ。」とほめました。(過程をほめる、楽観性)

今振り返ると、「過程をほめる・差異に気づいて探究する・努力不足の認識・楽観性・ママパパの支援」に当てはまる内容だったんだなと、思います。たまたまですが。

ただここまで長男くんとやってこれたのは、彼とやりとりする時間があったからです。

どれだけ彼のことを知っているか、正直に答えてくれるか、スイミングでの状況を知っているか、練習をしているのか、など把握するためにはそれだけ、子どもとやりとりする時間が必要でした。

時間がない現代では、大変そうに思えますが「過程をほめる・差異に気づいて探究する・努力不足・楽観性・ママパパの支援

の5つが理解するだけでも時短になるのではないかと考えます。

良いことだけを書いていますが、公文の算数には自信がいまいち持てないようで、公文をやる前から「できるかな〜、できない気がするな〜」とマイナスなことを言っています(笑

個人的な意見として、幼少期はGRITは方向性だけでなく、強さ弱さがあるように思えます。

それは、本人のこれまでの体験から強弱があるように思えます。

スイミングであれば、頑張って能力を伸ばしたから進級できたから、スイミングのGRITが強い傾向にある。

一方、公文の数字は、頑張ってやっているが間違いやテストが受からないから、公文の数字のGRITは弱い傾向にある。

ただやはりママパパの言葉ややりとりが子どものGRITの方向性を軌道修正する大きな力を持っています。

だからこそ、スイミングも頑張り、公文もあきらめずにやり続けていると思っています。

1事例だけですのでなんとも言えませんが、仕事や寝る以外の時間をできる限り共に過ごしている我が子を観察しているとそのように考察しています。

  • GRITは、「困難な状況でも、努力を続け、やり抜く力」のこと
  • GRITは、「粘り強さ」と「興味」によって形成されていること
  • 子どものGRITは、ママパパとのやりとりで軌道修正できること

いかがでしたでしょうか?

今回は、GRITについて学びました。

GRITは、困難な状況でも、努力を続け、やり抜く力のことです。

GRITは、子ども達の力を十分に発揮させ、彼らの目標達成や夢の実現の可能性を高くするのではないでしょうか。

ぜひ、我が子に持ってほしいスキルの1つですね。

ティラノ博士が言うように、「知らないでやるよりも、理解して意識してやる。」ではだいぶ行動も継続力も変わるのではないでしょうか?

この記事によって少しでも読者の方々の意識と行動に変化があれば幸いです。

それじゃ、Have a nice day!

【参考資料】

Angela Lee Duckworth「GRIT」

Suskind Dana「3000万語の格差」

小助川 瑠偉「Grit を伸ばす要因の検討 ―興味の一貫性と努力の粘り強さに着目して―」

Dweck, C.S., & Leggett, E.L.(1988)A social cognitive approach to motivation and personality.Psychological Review, 95, 256- 273.

奥村 咲・池田琴恵「大学生の非認知能力と関連する幼少期の体験の検討」

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