我が子の自己肯定感を高めるために、今回は「他者受容」を学びます。
これを学べば、子どもの自己肯定感を高めることができます。
それは子どもが困難な状況に陥っても、果敢に挑戦し、乗り越える力につながります。
それでは早速、共に学んでいきましょう。
ティラノ先生、こんにちは!
おお、こぶおくん。こんにちは〜。
いい天気だね〜、こんな日は外で友達と遊ぶんだのん?
いや、そんなことよりも他者受容について教えてよ!
これが理解できれば、ようやく自己肯定感を高める一連の流れがわかるんだよね?
妹に早く試したいし、それにしても自肯定感の話は長かったな〜
長くて悪かったのん。
(あ、怒った。。。やば)
とても勉強になったんだ。
だから早く教えてくださいよ〜
まあ、じゃあ早速はじめていくのん。
今回は他者受容について解説していくのん。
これまで自己肯定感を高めるための4要素の内、3つ(自己理解・他者理解・自己受容)を学んできました。
そして、他者受容は、最後の要素となります。
目次
他者受容とは?
他者受容は、自分は周囲の人から受容されている、自分は周りからサポート(支援)されているという気持ちのことです。
例えば、他者受容が深まると下記のような気持ちを持つことになります。
- 自分が、どんなにドジなことをしても、見捨てられることはないだろう
- 学校の成績が悪くても、自分のことを愛してくれるだろう
- 自分が、窮地に追い込まれた時には、必ず助けてくれるだろう
- 困った時には、必ず相談に乗ってくれるだろう
このような安心感がある状態であれば、この先にある自己肯定感はさらに高められると考えられます。
*他者受容は「他者のいい面も悪い面も全て認めること」と訳されることもありますが、今回は他者受容を「自分は周囲の人から受け入れられているという気持ち」という定義で勉強して参ります。
他者受容のメリット
他者受容のメリットは下記の点になります。
- 問題ある行動の抑止につながること
- 学習や成長への意欲が向上すること
- 困難な状況でも果敢に挑戦すること
1つずつ紹介をしていきます。
問題行動の抑止
小学生の他者受容が、自己価値および学級満足感に及ぼす影響について検討した研究がありますので紹介します。
この結果として、自分が「ちゃんと評価されている」と感じている他者受容が深い児童は、問題行動を抑えることができていました。
例えば、「学習にまじめに取り組む」「役割をきちんと果たす」「級友をしっかりサポートする」という姿を、友人や先生から認められることで、問題行動への同調もなくなったと報告されていました。
そしてこの効果は、問題が多い児童でも同じように問題行動の抑止につながっていました。
学級に受け入れられていると感じることは、学級集団へのアイデンティティ(自 分らしさ)が高まり、問題行動の抑止や学級からの離脱の防止につながると考えられる。
青戸 泰子他「 児童の他者受容が自己価値および学級満足感に及ぼす影響 」
他者受容は、クラスの荒れや学級崩壊を防ぐ一助となりうるのです。
子どもが「皆に受け入れられている」という安心感は、先生と能動的な関わりにつながり、友達との深い関わりになるという良好な人間関係になります。
そしてこの「良好な人間関係」を感じることで、友達や先生を「大切な存在」と認識します。
この状態が、子どもの学級への満足感を高め、学級崩壊やクラスの荒れへの抑止に働くと考えられます。
自己成長・学習意欲
子どもの他者受容感は、友達・先生・クラスから受け入れられていると感じることにより、自己価値や学習意欲へ影響を与えると考えられています。
自己価値とは、「自分自身がどれだけ他者や社会の役に立つことができるか」になります。
「皆に受け入れられている」と感じる子どもが、関係良好な「友達やクラスの役に立っていると感じる」ことは、自己価値を高めることにつながります。
そして更に「役に立ちたい」という考え方になり、自己成長や人間関係良好になることにつながると考えられます。
また、この他者受容が深い状態は、学習意欲の向上へつながることも示唆されています。
学習意欲を高めるための 8 条件の中に、情緒を安定させる:学校は私を受け入れてくれるという感覚、教師と生徒の相互信頼をあげている。
水田聖一 学習意欲を高めるための 8 条件
友達や先生から受け入れられている感覚は、子どもに安心感を与え、その状態で学習をすることが学習意欲につながると考えられています。
安心感が高まることが、自分の意見を発言できる、友人の意見を聴けるという行動ができるようになります。
この行動が、学級全体で良好な話し合いや学び合いができるようになります。
その結果、子どもの学習意欲を高めることになるのです。
他者受容感が深いと、周りの人の思惑に頓着せずに、自分が学習し、成長することに価値を置く熟達目標へと結びつくことが示されている。
桜井茂男「学習意欲の心理学一自ら学ぶ子どもを育てる-」
困難なことへの挑戦
他者受容が深いと、多少の困難にも立ち向かうことができます。
一方、その反対は困難に立ち向かうことができない可能性があります。
他者受容が浅いと、失敗経験の無いことに対しても、立ち向かうことさえしない無気力な状態になってしまう。
水上貴子「児童の原因帰属・と自己受容・他者受容感との関連について」
無気力とは、倦怠感/消極的友人関係/将来の展望/自己効力感の欠如/学業に対する積極的な関わりの欠如がある状態です。
他者受容を深めることは、ポジティブな考え、行動ができるようになるんだね。
そうだのん。
「安心感」がどれだけ子共にとって大事か理解できるのん。
じゃあ、この他者受容は、どのように深めるの?
いい点をついてくるのん。次にその深まり方について紹介するのん。
他者受容の深まり方
結論、他者受容は「他者からの言葉」で深まります。
他者受容は、「自分は周囲の人から受容されている」「自分は周りからサポート(支援)されている」という感覚のことです。
他者があってこその感覚になります。
だからこそ「他者からの言葉」が、この感覚を深めるのです。
ここで1つ研究を紹介します。
この研究では、他者からの言葉によって、他者受容感を獲得されたとが示唆されています。
中学生453名を対象に、体育授業での声掛けについてアンケートをとり、解析をしています。
具体的には、体育授業での成功/失敗場面にて、先生や仲間からどのような言葉を与えられるとうれしいのか?をアンケートで調査をしています。
うれしいと感じる言葉を多く人(他者)から受けた生徒ほど、他者受容感が高かったことがわかりました。
ここで気になるのは、「うれしいと感じる言葉」の中身です。
調査結果では、この「うれしいと感じる言葉」は、普段聞き慣れているごく一般的な言葉であったのです。
例えば、「すごい」「上手だね」「君のおかげだよ」「前より上手くなっている」「がんばれ」などです。
普段、皆さんが子ども達に伝えている内容ではないでしょうか?
このような他者の言葉が、子供達の他者受容を深めることにつながっている可能性が高いのです。
ただ、この研究の注意点は、対象が思春期の世代であること、体育の授業に限られた話であることです。
全体的に教師の発する言葉の頻度は低く、あるいは生徒たちには実感として伝わっていないこともあったそうです。
この記事は、乳児や幼児を持つママやパパを対象にしています。
なので、ママやパパの言葉、特に子どもが喜びを感じる言葉を選んで、伝えることが他者受容を深めることにつながる可能性があります。
他者の言葉が、他者受容を深めるんだね。
なんとなく、わかっていたけどね。
まあでも、「なんとなく」よりは「理解している」の方が自信を持って子供と接することができるのん。
で、具体的には何をすればいいの?
次に具体的な事例を紹介していいくのん。
他者受容の深め方
その子に合ったほめ方で、ほめる
前の記述にもあった「ほめる」という行為が、子どもの他者受容感は深めます。
ただここで注意したいのは、ただ単に「ほめる」ではなく、「その子に合ったほめ方で、ほめる」です。
「なんじゃそりゃ」と言う声が聞こえてきそうです。
先の中学生対象の研究での、「うれしい言葉」は、人によってその言葉が異なっていることがわかっています。
これはその子どもの経験や背景によって異なっている可能性があります。
そのことから子どもによってこのほめ方やその言葉が異なると考え、その子に合ったほめ方をした方が他者受容は深まると考えた方が良いかもしれません。
ほめるための3つのポイント
「その子に合ったほめ方とは?」
実際に行われた研究が参考になりますので、見ていきましょう。
この研究は、保育所・幼稚園に勤める保育者5名へのインタビューを行い、調査をしています。
インタビューの内容は、運動遊び場面における幼児とのかかわりについて行いました。
その結果、ほめることについて3つのフローがあることがわかりました。
- モニタリング
- ほめ言葉の選択
- 子どもの気持ちへの寄り添い
この3つのフローに従った「ほめ方」をされた幼児の他者受容がより深まることがわかりました。
それでは1つず掘り下げていきましょう。
モニタリング
まず運動遊びをしている子ども達のモニタリングを行います。
ここでのモニタリングは、「子ども達が興味を持って運動遊びをしているか、楽しんでいるかを把握すること」になります。
具体的には、下記の点になります。
- 体を存分に動かしているか、なわとびに興味をもっているか?
- 好きな遊びの中で、この子がどんなことを好んで遊んでいるか?
- やりたい遊びが十分に楽しめているか?
例えば、滑り台。
何度も繰り返し滑っているか、何か声を発していないか、階段をどんな風に登っているか、滑り台を滑るときにどのあたりが楽しそうか、などを把握することになります。
例えば、ドッジボール。
ボールを相手に当てて喜んでいる姿、ボールをキャッチして喜んでいる姿、ボールを一生懸命避けている姿、パスをして味方を助けている姿などを把握することになります。
このモニタリングが、その子の物事を楽しんでいる要素が見つけることができ、次のほめ言葉の選択につながります。
ほめ言葉の選択
次にモニタリングで把握した要素から、ほめ言葉を選択します。
保育者たちは、子どもの運動遊びの発展を期待して、【 具体的でわかりやすいほめ言葉 】をかけていた。
ここでの抑えたいポイントは、保育者のかける「ほめ言葉」は、子どもが遊びをさらに深めることが目的でした。
これは、遊びへの意欲を高めたり、運動遊びを面白くしたりすることにつながるのです。
ここでは肯定的な言葉だけでなく、ケチをつけるような言葉も使われていました。
できるはずなのに、途中でやめる場合に、「ここでやめちゃうなんてつまんないな〜」など。
このような言葉をかけられた子ども達はどうでしょうか?
遊びを続けたり、さらに遊びを深めるために試行錯誤する可能性があります。
ほめ言葉のポイントは、具体的かつわかりやすい言葉です。
何に対してほめているか?子ども達は理解できているのか?という点です。
「上手!」「すごいね!」だけでは、不十分の可能性があります。
では何を褒めるのか?
保育者達は、子どもの動作を褒めることを意識していました。
- 「 前よりだいぶ足が速くなったね!すごいな〜 」
- 「 ボールが遠くまで飛ばせるようになったね〜 」
- 「 鉄棒で逆上がりができるようになったんだね! 」
例えば、ドッジボールでの場面。
逃げることにおもしろさを感じてい る子がいたら、どう声をかけるでしょうか?
「 うまく逃げられるようになったね 」 「 すごく上手にかわしたね 」などのほめ言葉を保育者は声掛けしておりました。
保育者は、その子の動きをなぞって言葉にしていたのです。
抽象的なほめ言葉でなく、具体的なほめ言葉をかけることは、その後の子どもの関係性欲求や運動に対する内発的動機づけに影響を与えることが示唆される。
杉本信「保育者のほめ言葉が幼児の運動に対する内発的動機づけに影響するプロセス」
子どもの気持ちへの寄り添い
ほめ言葉をかける際に,2つの寄り添いが考察されています。
- 子どもの気持ちや動きへの受容・共感すること
- 子どもの気持ちや動きを認めること
子どもの気持ちや動きへの受容・共感すること
これは、その子の心情や意欲といった気持ちや動きを受け入れ、共感しながら関わり、褒めることになります。
例えば、子どもが「今」「どんな運動遊びを好んでいるか」「その運動遊びの何が楽しいのか」「何に満足してい るのか」「どこが充実しているのか」などです。
引っ込み思案な子が一歩前に出るような時、保育者と子どもの間で受容と共感のやりとりが取り上げられていました。
保育者「〇〇ちゃん、今日やってみたんだー、友だちと一緒にやれてよかったねー。」
園 児「楽しかった。」
保育者「うわー楽しかったねー、先生も見てたけどさー、よく頑張ったと思うよ。」
モニタリング、ほめ言葉、相手の気持ち受容と共感がされた事例になります。
子どもの気持ちや動きを認めること
これは、子どもが自分なりに 一生懸命取り組んでできなかったことが、できるようになった姿や動きを認めることになります。
例えば、鬼ごっこの場面。
嫌になってやめたしまったけど、またその子が戻ってきた時にその場面が取り上げられていました。
保育者「よーくまた戻ってきたねー、やっぱり友達と遊ぶのは楽しいよね!」
子どもの気持ちや動きを認めることで、子どもの心情や意欲を後押しすることになります。
この結果として、子どもに対して安心感を与えられる存在になることにつながります。
これが他者受容になります。
保育者に対して「自分のことを見ていてくれる」「わかってくれる」「認めてく れている」「一緒に喜んでくれる」という受容感を感じる存在になります。
その子に合ったほめ方の効果
以上の3つの流れによる、その子に合ったほめ言葉により、他者受容感を深めることがわかりました。
またこの研究の最後には、大事に考察があります。
この他者受容が深まった子どもには「認められた有能さ」が芽生え、次の挑戦への達成のために努力を肯定的に捉える、という考えにつながると考察されていました。
しかもこれは循環します。ほめられたい欲求が保育者と子どもの関係性を強化し、挑戦への努力をする→褒められる→また褒められたい欲求が高まる、という循環になります。
冒頭に紹介した他者受容のメリットに当てはまる内容になります。
我が家の場合
少しでも参考になればと思い、我が家での事例を紹介します。
年長の長男くんの折り紙の話になります。
ある日、幼稚園にて、折り紙の飛行機を作ってきました。
頑張って折ったのがわかるくらいクシャクシャで、折り目も雑で、決して上手いとは言えませんでした。
普段なら「すごいね〜」「かっこいいね〜」とほめるだけで終わっていたと思います。
ただ、少し前にママとの「あるやりとり」を聞いていました。
ママ「長男くん、すごいね〜!」
長男くん「ママ、すごいしか言わないね。」
聞いていて、グサっときました。
その頃、妻も私も次男くんのお世話や仕事でバタバタの状況だった記憶があります。
しかし、そんなことはただの言い訳。
子どもが何より大事、であれば反省しなければなりません。
そこで私は折り紙を見て、「こんな飛行機初めて見たな〜、どうやって作ったの?」と目の前で折ってもらいました。
張り切って、折り紙を一生懸命折っている姿が印象的です。
私 「新しい折り方覚えたんだね、この部分結構難しいのによく折れたね〜、パパも飛ばしてみたいな〜」
長男くん「じゃあ、折り方教えてあげるね!」
私 「ありがとう!かっこいいの折れたよ、長男くん折り紙上手いね〜」
それから、彼は折り紙にハマりました。
そして、今ではドラゴンを折れるようになりました。
しかも自分で色々と考えオリジナルなドラゴンを作っています。
注意点ですが、上記の長男くんと私のやりとりだけがこのきっかけになったとは思っていません。
なるべく折り紙ができる環境作りと、新たな折り紙の折り方と出会う機会、作品をほめる意識、をしたつもりです。
そして彼には折り紙だけなく、ブロックでも、ラジコンでも、昆虫飼育も、折り紙同様に環境や機会を与えました。
しかし、他の物事よりも彼は折り紙への探究心が強くなりました。
最近、ポケモンやベイブレードへの興味も強くなっていますが。
恐らく、ここまで彼の折り紙への探究心を高めたのは、「周りの人からの他者受容を深める言葉」ではないかと考えています。
聞いている限りでは、祖父祖母から、幼稚園の先生から、友達から、多くのほめ言葉があったようでした。
また「長男くん、作って!」という次男くんや友達からの依頼も多くあったようです。
次男くんは家でよく「ドラゴンを作って、作って!」と言って、長男くんを困らせています(笑
他者受容を深める、ほめる言葉が「認めらえた有能さ」を刺激し、次なる挑戦に向かわせた。
そして、それが循環した、と考えられるような事例でした。
なんか難しいことを言っているようで、意外と簡単そうですね。
そう簡単なもんじゃないのん。
モニタリング・言葉の選択・寄り添いが大事だのん。
これは時間が必要だのん。
(あ、怒ってる。)
確かにそうですね。
忙しいママパパもある程度の時間を割いてやらないといけないね。
知らないでやるよりも、理解して意識してやるのが大事だのん。
多忙なママパパだからこそ、限られた時間で効果的に接することができると思うのん。
まとめ
- 他者受容は、問題の抑止や挑戦や成長を促すこと
- 他者受容は、他者からの言葉で影響を受けること
- 他者受容は、その子に合ったほめ方で深まること
いかがでしたでしょうか?
今回は、他者受容を深める方法を学びました。
他者受容は、自分は周囲の人から受容されている、自分は周りからサポート(支援)されているという気持ちのことです。
この考えが深いほど、問題行動の抑止になったり、学習や自己成長、人間関係を良好にしたり、困難に挑戦する原動力になります。
ぜひ、我が子に深めて欲しいスキルの1つですね。
ティラノ博士が言うように、「知らないでやるよりも、理解して意識してやる」では、だいぶ行動も継続力も変わるのではないでしょうか?
この記事によって少しでも読者の方々の意識と行動に変化があれば幸いです。
それじゃ、Have a nice day!
【参考資料】
桜井茂男 「 学習意欲の心理学―自ら学ぶ子どもを育てる― 」
青戸 泰子他「 児童の他者受容が自己価値および学級満足感に及ぼす影響 」
桜井茂男「学習意欲の心理学一自ら学ぶ子どもを育てる-」
水上貴子「児童の原因帰属・と自己受容・他者受容感との関連について」
吉村 功「体育における教師や仲間からの言葉がけが他者受容感に及ぼす影響」
杉本信「保育者のほめ言葉が幼児の運動に対する内発的動機づけに影響するプロセス」