我が子の自己肯定感を伸ばすには?そもそも自己受容って何?
本日は、自己肯定感を形成する上での2段階目「自己受容」を学びます。
この記事では自己受容とは何か?と自己受容のメリットについて理解することができます。それでは共に学んでいきましょう!
こんにちは、ティラノ博士!
こんにちは、こぶおくん。
前回は、自己肯定感の形成の最初の段階、自己理解について教えてもらったけども、
次の段階の自己受容について教えてよ。
よく覚えているのん。
自己受容はとても大切な段階だのん。まずは自己受容の定義から考えていくのん。
自己肯定感は、「自己理解」「自己受容」「他者理解」「他者受容」の工程を経て、形成されるとわかっております。
今回は、その自己受容について学んでいきたいと思います。
目次
自己受容とは
まず自己受容とは、一体どういう意味でしょうか。
結論、私は下記のように理解しています。
「 今の不完全な自分を「価値がある自分」と捉え、一生懸命生きていく生き様 」
過去の研究者の報告では、自己受容を下記のように定義されていました。
自己受容とは、ありのまま の自己を受け入れようとする自己に対する「態度」 や「姿勢」、またはその「過程」を意味している と考えられた。
自己のそれぞれの側面がどのようなものであるにし ても、それらを自己の全体として、ただ素直に「今 の自分はこうなのだ」と暖かく受け止めようとする姿勢であり、意識ではなく、感情や感覚である と考えられる。
春日 由美「自己受容とその測定に関する一研究」
他の研究者たちもこのような定義をしていましたが、少し難しいですね。
要は、自身を客観的に見ることができ、自分の好きな部分、嫌いな部分を含めて全て受け入れるということになります。
「受け入れる」という部分の理解が難しいかもしれません。
この部分は「自分に価値がある、と思えること」と訳すと、理解がしやすいと思います。
これは岸見一郎/古賀史健著「嫌われる勇気」に記載がありました。
以上のことを踏まえ、自己受容は自分を受け入れる姿勢や感情であります。
ただその受け入れた感情を持って、前に進むなければ自己肯定感は形成されません。
研究結果から自己肯定感の要素として、下記の構成要素が挙げられています。
・積極的な生き方
・他者との円滑な関わり
・情緒的に不安定でないこと
・自信があること、自己信頼していること
・今の自分自身に満足していること
そのことから私は、「一生懸命生きていく生き様」を加えました。
結果、私は自己受容を、 今の不完全な自分を「価値がある自分」と捉え、一生懸命生きていく生き様 、と考える様になりました。
自己理解と自己受容
自己受容は自己理解が前提として成り立っているものになります。
自己理解を一言で言うと、「自分の特徴を知っていること」になります。
自分の気質や性格、価値観、考え方、態度、行動など知っている状態になります。
一方、自己受容は、自分の特徴(短所も長所も含め)を受け入れた上で、前向きに捉え進んでいく態度や感情になります。
なるほど、自己理解が前提としてあり、その次に自己受容がある、というわけですね。
ところで、自己受容があることは何かメリットがあるんですか?
さすがだのん。
一生懸命生きていく生き様、とあるようにいくつかメリットがあるので紹介するのん。
自己受容のメリット
自己受容を深めるメリットは、下記のスキルのアップにつながります。
- 対人スキル
- 課題解決力
- 興味関心度
- 自己肯定感
ここでは過去の研究結果を踏まえて、「対人スキル」と「課題解決力」を取り上げます。
対人スキル
自己受容が深まることで、対人スキルが高くなります。
自己受容は自己完結的なイメージでありますが、なぜ対人スキルに影響を与えるのでしょうか。
この点は過去の研究で、明らかになっています。
結論、自分を素直に見ることができれば、周りの人も素直な目で見ることができるからです。
ここで、自己受容と友人関係を検討をした研究を紹介します。
対象:公立中学校の生徒414名(1年生:139名、2年生:134名、3年生:141名)
期間:2011年4月〜2012年3月
調査方法:友人関係の深さと自己受容に深さをスコア化し、関連性を調べた。友人関係の深さは、「友人との付き合い方に関する尺度」を採用した。自己受容の深さは、「自己理解」「自己承認」「自己価値」「自己信頼」の質問で構成される「自己受容性測定スケール」を採用した。
結果:自己受容の深さと友人関係の深さには、正の相関が認められた。
この研究により、中学生は自己受容が深まるほど、友人関係が深くなることがわかりました。
自分の長所や短所、言動などといった特徴を理解することは、自分と似たような特徴を持つ友人を探すことができます。
その共通の特徴を、友人と共有することが親密な友人関係を築くきっかけなっている可能性が高いのです。
また、自己理解/自己受容を深め、自分に似た特徴を持つ友人を探し、関係を築いていく過程が、他者理解も深めると考えられます。
さらに「他者理解」が深まることが、自分や他者への信頼も深まり、親密な友人関係に結び付くとも考察されていました。
これは冒頭に紹介をした「自己肯定感形成のプロセス」の流れになります。
「友人関係の深さ」と負の相関があった特徴
この研究では、友人関係の深さが浅い中学生を検討し、その特徴を分析しています。
結果それは、「友人と関係を築きたいという欲求」と「関係を築いた際に拒否される不安」という2つの考えをもっている中学生であった。
「他者や自分を信用することが難しく、友人と関係を作ることができても、その対人関係に自信が持てず,友人と深い関係を築くことが難しくなっているのではないか」と、研究者は考察していました。
自分を信用するという、自己受容が浅いことが伺えます。
自己受容の重要性が理解できたのではないでしょうか。
対人関係と精神状態
対人スキルに関して、もう1つ研究を紹介します。
この研究では、自己受容と他者受容の各深さと、対象者の精神的安定を検討した研究になります。
対象:大学生354名(男子108名、女子193名)(国立大学:150名、私立大学:194名)
期間:2012年(1回のアンケートで分析)
調査:自己・他者受容尺度/心理的ストレス反応尺度他
結果:結果は下記の通りでした。
- 自己受容/他者受容の得点が共に高いと、精神的に健康であった。
- 「自己受容・他者受容が共に高い」グループと「自己受容・他者受容が共に低い」グループの数が有意に多かった。
- 自己受容の深さと精神的健康「抑うつ・不安」「不機嫌・怒り」「無気力」の3項目全てで、負の相関が見られたが、他者受容に関してはどの項目にも相関が無かった。
考察:
- 自己受容が精神的健康に与える影響は、他者受容よりも大きいこと。
- 自己受容&他者受容が共に高いグループは、無気力傾向が弱く、相手や周囲の状況から会話ができ、コミュニケーション能力が高い傾向であった。共に低いグループはその反対であった。
- 自己受容が高く、他者受容の低いグループでは、自分のことばかり話をするので、対人関係が悪くなる。またその原因を相手の責任と考え、怒りなどの感情が生まれる傾向であった。
- 自己受容が低く、他者受容が高いグループは、相手を傷つけてしまう発言をした場合、自分への怒りや不機嫌などの感情が生まれる傾向であった。
- 共に低い場合は、対人の問題が生じても、自分も他者を受け入れることもできないので、その問題を放棄してしまう傾向にあった。
自己受容が精神的健康が関係していることに関しては、他者受容が「自己受容の前提」であるからだと考えます。
自己受容は「自分を価値ある人間と捉えた前向きな姿勢」です。
自己受容が深ければ、前向きで精神的に健康な状態と言えます。
その状態であれば、自己への信頼感が他者への信頼を促し、他者受容が深まります。
この流れは中学生を対象とした先の研究結果と同様で、「自己受容が深ければ、深い友人関係ができる」につながります。
そのため「他者受容」単独では、自身の精神的健康には影響があまり無いと考えらます。
以上、自己受容が深いと他者受容も深くなり、対人関係が良好で、精神的健康も得られる、ということが分かりました。
対人関係における自己受容の大切さ
自己受容は、「今の不完全な自分を「価値がある自分」と捉え、一生懸命生きていく生き様。」です。
自己受容が深ければ、「関係を築いた際に拒否される不安」がある程度軽減できる可能性があります。
今回紹介した中学生の研究では、「友人関係を深く築けた中学生」と「深く築けなかった中学生」を長期的な視点で見ると、差が大きくなる可能性があります。
というのも、「深い関係の友人の数」は、自己肯定感に関連するからです。
深い関係の友人の存在は、本人の長い人生の中で、困った時や楽しいことをしたい時にそれを分かち合える存在となります。
自己肯定感が高いことは、主体性やレジリエンスなど人生を前向きに進む要素になります。
このことからも「自己肯定感を育てたい。」というママパパは自己理解・自己受容の重要性が感じられたのではないでしょうか。
そして自己理解・自己受容・他者理解(他者との関わり)は、「自己肯定感の形成」に必要な要素ということが理解できたのではないでしょうか?
自己受容が深ければ、対人スキルが高いとは意外でした。
そうだのん。
自己受容の大切さを理解できたのん。
次に課題解決力について紹介するのん。
課題解決力
自己受容のメリット「課題解決力」について紹介をします。
自己受容が課題解決に関係あるのか?
疑問に思いますが、自己受容は下記の点で課題解決力に結びつきます。
⚫︎自分の長所や上手に使えそうな部分を 活かしていく
⚫︎自分の弱点や癖を知ることで, 行動に反映できる
この点を導き出した研究を紹介します。
中学生活における自己受容の重要性
対象:中学1年生267名を対象とした研究
調査:学校での適応感と自己受容の関係性を調べた。
学校適応感を構成要素は、下記の4つです。
部活/友人関係/進路問題/学習活動
結果:自己受容の高い生徒に方が、学校での適応感が高かった。
誰もが中学生で出会う課題や問題に対して、自己受容が深い場合、
「これは自分の得意な分野だ、やってみよう!」
「自分はこれが弱点だから、やめておこう。」
という適切な判断ができると考えられます。
例えば、進路に関して自分の学力や志望校の雰囲気や特徴という外部要因に対して、自分が適していると思う進路を選択するという流れになります。
結果として、自己受容が深いと自身にとって最適な選択をする可能性が高いです。
自己受容が浅い場合
一方、中学生活がうまくいっていない場合、自己受容はどうなっているのかを検討した研究あります。
対象:中学1、2、3年生
調査:学校嫌いの感情の高いグループと低いグループで自己受容得点を比較した。
結果:中学1、2年生では、学校嫌い感情の高いグループにおいて、自己受容得点が有意に低かった。
中学3年生では、有意差が出なかったが、同様の傾向が得られた。
学校生活がうまくいっていない時、中学生本人の自己受容ができていない状態にあったと記載がありました。
このように自己受容が浅い場合は、充実した学校生活が送れない可能性があります。
この2つの研究からも、学生にとって自己受容の重要性が理解できるのではないでしょうか。
充実した学校生活を送るための、自己受容の要因
では、もう1つ中学生を対象とした研究を紹介をします。
この研究では、中学生のどの様な自己受容が深ければ、充実した学校生活を送れるのか、を検討しています。
対象:中学生
調査:自己受容と学校生活の関係を調べた。
学校生活の構成要素は、下記の6つです。
進路決定スキル/集団行動スキル/健康維持スキル/自己学習スキル/コミュニケーションスキル
結果:男女ともに「家族」「生き方」「人間関係」「経済状態」という項目の自己受容の得点が高いほど、充実した学校生活を送れていた。
この研究では、自己受容を「生活」「性格」「表象」の3種類に分けて、学校生活との関連性を検討しています。
自身の性格や物事の捉え方などより、自身の家族や生き方についての自己受容の方が重要であったという結果になります。
意外ではありますが、より現実的なのかもしれません。
例えば、進路を決める際に、家族の状況や家庭の経済状況などを理解し、限られた進路の選択肢の中から前向きに選択する、といったところでしょうか。
個人的感想ですが、限られた選択肢に対して、「前向きに選択する」といったところがポイントだと思います。
性格や物事の捉え方は、自身のことなので変化しようと思えばなんとかなります。
ただ家族/生き方/人間関係/経済状況などは、中学生自身の力ではどうにもならない部分であります。
そのため、その現状を受け止めつつ、「どうすれば良いか?」を考えることが積み重なり、課題解決力が身につく可能性があります。
課題解決にも役立つんだね。
自己受容なんてノーマークだったから、今日知ることができてよかったよ。
そうだのん。
知らないでやるより、「理解して意識してやる」の方が行動しやすいし、継続力も違うのん。
いつも言っていることですね。
で、実際この自己受容を高めるためにはどうすればいいんですか?
ごめん、今日はもう帰るのん。
仕事が山ほど残っているのん。
じゃ、またねの〜ん
(ああ〜いつも通り、強引だな〜)
今日もありがと〜、早く帰って妹にも教えてあげよう。
まとめ
- 自己受容とは、今の不完全な自分を「価値がある自分」と捉え、一生懸命生きていく生き様であること
- 中学生では、自己受容が深い程、友人との関係が深くなること
- 中学生では、自己受容が深い程、課題解決力が高くなること
いかがでしたでしょうか。
今回は自己受容とは一体何か?
自己受容が深いと、どんなメリットがあるのか?を勉強しました。
自己受容は、今の不完全な自分を認め、前に進む生き様です。
この考えが深い程、自分に合った友人を作り、人生での的確な選択を行うことができる可能性が高くなります。
ぜひ、深めて欲しいスキルの1つですね。
次回は、この自己受容を如何に深めれば良いのか?を実際の研究を踏まえながら、学んでいきたいと思います。
ティラノ博士が言うように、「知らないでやるよりも、理解して意識してやる」では、だいぶ行動も継続力も変わるのではないでしょうか?
この記事によって少しでも読者の方々の意識と行動に変化があれば幸いです。
未来ある子供たちのためにも、共に学んでいきましょう!
それじゃ、Have a nice day!
【参考資料】
春日 由美「自己受容とその測定に関する一研究」
土谷 健祐・幸田 るみ子「中学生の親密な友人関係の形成における 内的作業モデルと自己受容性との関連」
清兼 渚・鈴木 友美・五十嵐 哲也「青年期のおける自己受容・他者受容のバランスと発言抑制」
福島 亜希・佐藤 睦子「中学生の学校適応感に関する研究」
米川 和雄「中学生の学校生活スキルに及ぼす自己受容の効果」